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恋の戦争 展示棚 物語の棚 物語の棚 プロローグ 即ち恋愛は戦! [-]
恋。
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人を好きになり、告白し、結ばれる。それはとても素晴らしい事だと誰もがいう。
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だが、それは間違いである!
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恋人達の間にも明確な力が存在する!搾取する側とされる側、尽くす側と尽くされる側、勝者と敗者!!即ち恋愛は戦!
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私立秀知院学園のトップに立つ二人、生徒会長・白銀御行と副会長・四宮かぐやは恋の本質を誰よりも心得ていた。
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そう、好きになった方が負けなのである!!天才たちの恋愛頭脳戦は、今日もまた続いている……。
[四宮かぐや]
早坂、それは確かなのね!?
[早坂愛]
はい。情報によりますと、会長は毎日、放課後にこの階段の上の神社に通っているそうです。
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最近、四宮かぐやは気付いた。白銀御行がいつもより疲れていることに。
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白銀が家計のためにアルバイトをしているのは周知のことだ。もちろん四宮もそれを知っている。しかし最近、白銀が毎日飲んでいるコーヒーの量が以前のほぼ倍になっている。これは明らかにおかしい。
[四宮かぐや]
(大事な試験がないこの時期にこれほど疲れているなんて、何かあるに違いないわ!)
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その真相を明らかにすべく、四宮かぐやは何度か探りを入れたが、決定的な答えは得られなかった。
[四宮かぐや]
(言いたくないのなら、暴くまでよ。ふふふ……四宮の名にかけて、その隠された真相、突き止めてみせるわ!)
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私欲まみれの四宮の好奇心は溢れんばかりに膨らんでいた。
[四宮かぐや]
そういえば、さっきから気になってたんだけど、こんなところに神社なんてあったかしら?
[早坂愛]
そうですね……ずっとここにあったようですが、どうして今まで気づかなかったんでしょう。[四宮かぐや]
そこはかとなく怪しいわ……まさか会長はそういう怪しいアルバイトに手を……!?
[早坂愛]
その発想の方がもっと危ないと思いますが……まぁ、とりあえず入ってみましょうか。もたもたしてると会長、見失いますよ。
[四宮かぐや]
……早坂、あれは何をしているの?
[早坂愛]
ご覧の通り、麻雀かと。
[四宮かぐや]
それは見ればわかるわ。なぜこんなにも大勢の人が集まって神社の境内で麻雀なんかやってるのかを聞いてるの!
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神社に入った途端、一面に広がる雀卓の数に二人は言葉を失った。
[白銀御行]
お待たせしました、ご注文のコーラです……え?四宮と早坂?どうしてここに?
[四宮かぐや]
それはこちらのセリフです!会長こそこんなところで何をしてるんですか?
[白銀御行]
何って、見ての通りバイトだけど。この前ここの神社が新しい麻雀を普及するイベントのためにスタッフを募集していたのを偶然見かけてな。ちょうど時間も合うから応募したら受かったんだ。
[四宮かぐや]
そういうことだったんですね……でも会長は普段から寝不足ですし、バイトを増やして大丈夫なんですか?
[白銀御行]
短期バイトだし、イベント期間だけなら何とかなるだろ。
[四宮かぐや]
会長がそうおっしゃるのなら……ということで、帰るわよ早坂。
[早坂愛]
ごめんね、それロ~ン!
[四宮かぐや]
って何麻雀打ってるのよ……
[早坂愛]
いや……そこのルール説明をてたら面白そーだなって思ってぇ……折角来たし?かぐやさんも一局どうですか??
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四宮が早坂の指の示す方を視線で追うと、そこには看板があった。近付いてふむふむと頷きながらじっくりルールを読み進める。
[四宮かぐや]
面白いかどうかはさておき、この「運命のカード」というのは、誰かさんの傑作な気がしてならないのですが?
[白銀御行]
全くだな。神社の方もそのルールはとあるピンク髪の女性が書いたと言ってたし。
[四宮かぐや]
やはり藤原さんでしたか……でしたら私は遠慮しておきます。お先に失礼します。
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新しい麻雀のルールに多少面白さはあったものの、四宮を引き止めるほどでもなかったようだ。本来の目的を達成した彼女が引き返そうとした、その時。
[一姫]
ただいまにゃー!
[白銀圭]
ただいま。お兄ぃ、ちゃんとやってる――って四宮さん?!どうしてここに……?
[四宮かぐや]
まぁ、圭もここでバイトを?
[白銀圭]
はい、兄にここのお給料がすごくいいからお前も一緒に来いと言われまして。
[一姫]
兄妹どっちも働き者だから、すっごく助かるにゃ!
[白銀御行]
四宮、紹介するよ。こちらの方は一姫さんで、ここの……
[一姫]
この神社の神様だにゃ!
「四宮かぐや」
神様……?
[白銀御行]
まぁ、簡単にいえばここの店長で俺たちの雇い主みたいな?
[四宮かぐや]
そういうことですか。我が校の会長と会計がいつもお世話になっております。
[早坂愛]
(ロぶりがまるで家族のそれだよな……)
[相原舞]
み、御行くん!今大丈夫?注文が多すぎて手が回らなくて……!
[白銀御行]
相原さん申し訳ない!おしゃべりばかりで……今すぐ行きます!
[四宮かぐや]
……早坂、やっぱり帰るのはもう少し後にするわ。
[四宮かぐや]
さぁ、会長!勝負です!
[白銀御行]
な、いきなりどうした、四宮。
[四宮かぐや]
今は休憩中でしょう?よくよく考えてみれば、せっかく来たならやってみなければ損というもの。ですが普通に麻雀を打つのも面白みに欠けます。いつものように、何か賭けましょう。そうですね……会長が負けたら今日からここでのバイト禁止というのはいかがですか?
[白銀御行]
え???なんで?!
[四宮かぐや]
そうと決まったら……先ほどの巫女さん、相原さん、でしたかしら。一局お付き合いいただけますか?
[相原舞]
わ、私ですか?私は麻雀あんまり得意じゃないんですけど、それでもよけば……。
[白銀御行]
待て!四宮、俺はまだいいとは言ってないぞ!
[早坂愛]
会長さんもぐちぐち言わなーい!勝てればバイト、続けられるじゃん?
[白銀御行]
いやそうだけど、話が一方的すぎるだろ?!
[早坂愛]
なぁんだ、会長さんみたいな生徒の頂点に立つ男が女子たちとの勝負から逃げるんだぁ〜。
[白銀御行]
は、ははは?そそそそんなことあるわけないだろう!漢 白銀御行、どんな挑戦であろうと逃げるわけがない!
[白銀御行]
(ましてや四宮との勝負、ここは引けない!)
[早坂愛]
(かぐや様、見事に釣れました。一本釣りです。)
[四宮かぐや]
(よくやったわ早坂、あとは任せてちょうだい!)
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二人は視線で言葉を交わした。普段からこのように会話してきた二人の絆があるからこそ成し得る技だ。
[四宮かぐや]
(会長はそんな浅はかな人ではないと信じてるけど、思春期の男をあんな凶器級の胸を持つ女と一緒にさせるのはどう考えても危険……!すべての不安はこの手で取り除かねば!
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四宮からすれば、白銀を一秒たりともこの「桃源郷」に長居させたくないのである!
[白銀御行]
(こんなにいい給料のアルバイトはそうそう無い、ここはどうしても勝たなければ……!そういえば四宮が負けた時の罰ゲームを考えてなかったな。一姫さんのネコミミと相原さんの巫女服を借りて四宮に着せようか。いや相原さんの服は無理があるか。)
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今後の経済状況を決める勝負を前にしても、白銀は依然として健康な思春期の男子なのであった。
物語の棚 インターログ 恋愛頭脳戦とは全く関係のない麻雀対決、白熱! [四宮かぐや]
ツモ。リーツモー盃口、それとドラは……あたり。裏ドラ2。
[白銀御行]
(またかよ?!これで3連続満貫だぞ?自動雀卓は小細工もできないし、これこそトップ階級の強運とでもいうのか……!?)
[白銀御行]
(マズいな……四宮の親番だ。ここで満貫ツモでも食らってみろ、いや、満貫以上の可能性もなくはない……そんなことにでもなったら俺が逆転する可能性はほぼゼロ……ッ!)
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白銀御行は東場の間にピンチに陥ることを予想もしていなかった。四宮かぐやのツモの猛攻をモロに浴びて、自分の闘争心が点数と共にザクザクと削られてるように感じる。
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社会のトップにいる四宮が、麻雀でもトップにいるのは当たり前だとでもいうのか?
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もちろん、答えはノーだ。
[四宮かぐや]
(ふふ……会長、もしかしたら私と正々堂々と勝負する気なのかしら?こんな不確定素だらけのゲームで勝ちたいのなら、そんな甘ったるい考えは捨てることです。)
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四宮はチート行為をしている。そのチートの正体はというと、最も信頼を置いているメイドであった。
[白銀御行]
(2、3ソーのターツ、高めには三色もつく。上家の早坂は4ソーを一枚捨ててたし、もう一枚期待できそうか?)
[四宮かぐや]
(残念でしたね、会長。早坂が上家にいる限り、会長の勝利はありえません。)
[早坂愛]
……。
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四宮は知っている。自分に仕えるメイドが普段「雀魂」のようなネット麻雀をやっていることも、段位がそこそこ高いことも。そして今、メイドとして培ってきた、空気と顔を読む観察力は、雀卓で最も強く発揮されているのだ。
[四宮かぐや]
リーチ。
[白銀御行]
……ここでリーチか、でも俺もようやく追いついた!たとえ四宮の親番リーチでもここは追っかけリーチだ!
[早坂愛]
……9萬。
[四宮かぐや]
早坂さん、その9萬ロンです。リーチのみで1600点ですね。
[白銀御行]
お、俺の立直三色ドラ2が……。
[早坂愛]
ラッキ〜★いやぁ危なかった〜、四宮さんにアガられて逆に助かっちゃったし〜!
[四宮かぐや]
(負けを認めなさい、会長!これも会長の心身の健康のためなんです!悪く思わないでください!)
[相原舞]
舞も、舞も頑張る。ふん、ふんっ!ふんっ!!
[四宮かぐや]
……相原さん、それ、ご祈祷ですか?
[相原舞]
はい、そうです。神様にこの鈴の音が届くように。そうしたら神様も少し幸運を私に分けてくれますので……えへへ。
[早坂愛]
あは、それかわい〜!あたしも全然アガれないから、その鈴あたしにも貸してくれなーい?
[四宮かぐや]
(祈祷で勝つつもりなの?なんて馬鹿馬鹿しい。麻雀は確率のゲームよ。)
[白銀御行]
今度こそ!リーチ!
[四宮かぐや]
(まずいわ、あの巨乳巫女のせいで全然気づかなかった……2シャンテンのこの手は間に合わなさそうね。早坂、そっちはどう?)
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四宮からの視線を察し、早坂愛はそっと目で河を指す。それだけでも、四宮には十分だった。
[四宮かぐや]
(会長の現物ですし、完璧の勝利は一旦置いといて、ここでの放銃は仕方なしと思えば….!)
[早坂愛]
ごめんね四宮さん、それあたり~!
[相原舞]
あ、そ、その牌、私もロンです……。
[四宮かぐや]
え?えええ?いつの間にリーチまでかけてたの?
[相原舞]
さっき祈祷した後に……ご、ごめんなさい、舞の声、小さくて……。
[四宮かぐや]
くっ……、ここは私が油断してしまったようですね。早坂さんは平和ドラ1、相原さんはリーチ……なので、とりあえず裏ドラを見てみましょう。
[四宮かぐや]
(会長の立直に気を取られてこっちに刺されるとは。でも立直赤ドラ2ならまぁ大した損じゃないし……)
[相原舞]
あ、裏ドラ3ですね……!
[四宮かぐや]
(なんですって?!)
[白銀御行]
リーチドラ5で12000、それに早坂の2000を加えて、差が一気に縮まった!助かりました、相原さん!
[早坂愛]
あちゃー、こりゃちょっとまずっちゃったなー。ね、四宮さ……
[四宮かぐや]
つ、次っ!相原さんの親番です!
[相原舞]
ひぃ!は、はい!
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四宮が右手を頬に軽く添えると、目つきも冷たくなっていく。そう、彼女は昔のように冷静な自分に戻らなければと思ったのである。
[四宮かぐや」
(四宮家の人間として、こんなみっともない失態は二度とありえない!)
[白銀御行]
(四宮の顔つきが今までよりも真剣になっている。俺とはまだ差が大きいというのに……。これからはもっと気をつけないと。)
[早坂愛]
(はぁ……面倒なことになっちゃったな。わたしもちゃちゃっとアガってスッキリしたいのに。今夜寝る前にサクッと雀魂でもやろっと。)
[相原舞]
(もう一回、裏3当たらないかなぁ〜)
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恋愛頭脳戦とは全く関係のない麻雀対決、白熱!
物語の棚 エピローグ 本日の勝敗、引き分け。 [早坂愛]
同点で終わっちゃったね、会長さん。これはどう判定すれば?
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相原舞の祈祷は白銀御行にも効果があったようだ。南場に入ってから白銀も奮起し、四宮かぐやに追いつき、結局同点一位で半荘を終えた。
[白銀御行]
もう一半荘、いく?
[白銀圭]
もう一半荘いかれてたまるか!バカお兄ぃ休憩終わりよ!早く代わって!かぐやさんがもっとやりたいなら私が代わりにお相手しましょうか。
[四宮かぐや]
ごめんね圭、せっかくだけど時間も時間だしそろそろ帰らないと。また今一度やりましょう。
[白銀圭]
そうですか……。
[四宮かぐや]
そうだ、今度は生徒会室にいらっしゃい、藤原さんに麻雀を用意してもらいましょう。
[白銀圭]
四宮さん……はい、絶対いきます!
[四宮かぐや]
約束ね。それと会長との勝負についてですが、まぁ私が勝てなかったということで、会長のバイトに口を出さないことにします。
[白銀御行]
というか今回の勝負元々おかしいぞ。そもそも何で俺がここで働くのをそんなに嫌がったんだ?
[四宮かぐや]
終わったことですし、もう忘れてください。
[白銀御行]
そんなわけにはいかないだろ、人をあんだけ緊張させておいて、せめて理由をだな……
[一姫]
まぁ、そこのお嬢様が勝っても負けても、白銀兄妹のバイトは今日までだけどにゃ。
[四宮かぐや]
え?そうだったの?
[白銀御行]
は?!一姫店長!イベント期間はまだ一週間あるはずでは!?
[一姫]
店長じゃなくて神にゃ!まぁ、色々あってイベントはおしまいにゃ。
[白銀御行]
そ、そんな……せっかくのうまいバイトだったのに…。
[一姫]
にゃにゃ……そ、そう落ち込まないでほしいにゃ。御行も圭もすごーく頑張ってくれたにゃ。ちゃんと頑張りをお給料に上乗せしてやるにゃ。それと、ふたりにプレゼントも用意してあるにゃ。
[一姫]
最初に言ったの覚えてるかにゃ?頑張って働いてくれれば、この一姫が一つだけ願いを叶えてあげるって話にゃ。
[白銀御行]
確かにそんな話もしたっけな。でもそれって冗談じゃ……いや待て、これって俺がずっと欲しかった…!
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白銀が一姫からもらった巾着袋を開くと、その中身はずっと欲しかったフランス語の参考書だった。値が張るものなので、何度も書店の前で迷いに迷って結局買えずじまいになっていたのだった。
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巾着袋の中身は、四宮からも見えていた。
[四宮かぐや]
(フランス語の……参考書……。)
[一姫]
御行、フランス語上手にしゃべりたいって言ってたから、これプレゼントするにゃ。「自分で勉強するのかよ」とか言ったらだめにゃ。何事も自分で頑張らないとにゃ。
[白銀御行]
神様の言う通りです。何事も自分で頑張るに限ります!ありがとうございます!
[一姫]
にゃはは。これを持って好きなあの子に教えてもらいにいくにゃ!これこそ神の贈り物にゃ!(ひそひそ)
[白銀御行]
それは……い、いや無理だ、あいつに頼むことになれば……絶対……!(ひそひそ)
[四宮かぐや]
あらあら……私と藤原さんがフランス語で交流できるからって、会長もフランス語を勉強したくなった、と?
[四宮かぐや]
こんなにも負けずきらいだなんて……お可愛いこと……。
[白銀御行]
(絶対こういうことになってしまう…!)
[一姫]
御行、案外恥ずかしがり屋さんだにゃ。一姫が代わりに頼んでやるにゃ。
[白銀御行]
だ、だめだ!絶対四宮には言わないで……あれ?四宮は?
[白銀圭]
四宮さんたちならもう帰っちゃったよ、二人がコソコソしてる間に。てかなに顔真っ赤にしてんの?キモいし早く接客に戻ってよ!
[早坂愛]
……かぐや様、勝てなかったというのになにやらご機嫌ですね。
[四宮かぐや]
なにを言ってるの早坂。気のせいよ、気のせい。
[四宮かぐや]
(会長ったら、あの願いを実現させるために働いていたのね……別に私が口を出す必要はなかったわ。)
[四宮かぐや]
(今度はフランス語を教えるという口実で近付き一気に好感度を上げる!告白させる最高のチャンスじゃないの!よくやったわ、ネコミミ店長!)
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神社に入った少年少女たちは、それぞれの願いを叶えた。
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本日の勝敗、引き分け。
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白銀御行は給料と参考書を手に入れ、
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四宮かぐやは次の一歩への布石を得た。
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魂天神社も新ルールのテストを無事に終えた。
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めでたし、めでたし。