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先にリリィの事情について理解しておく

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[選択肢] ・イブさんが自分で決めるのを待つ ・先にリリィの事情について理解しておく [-]よくよく考えてみると、雛桃の言うことはもっともだ。ここでぐずぐずしてるよりも、自分の目で、北原リリィがどんな人なのか見てしまった方が早い。イブさんの選択に口出しは出来ない。だけど、私は私で、何か出来ることがあるはず。 [-]客が誰もいない時は、礼奈ちゃんは基本的に私達の動向を気にしない。彼女いわく、「必要な仕事さえちゃんとやってくれればいいの。時々のサボりは、お仕事をもっと楽しくしてくれるでしょ」だそうだ。という訳で、清掃を終えた私は、ピークまでまだ時間があったので、休み時間を貰って修道院行きの地下鉄に乗った。 [-]聖シーベルト修道院は市の北部郊外に建ってるみたいだけど、あの辺りは市内からもけっこう近くて、付近には賑やかな住宅街や商店街、学校まであるんだよな。時間を確認したところ、地下鉄に乗ってから、乗り換えを含めてもう4~50分経っていた。 [修道士]今は礼拝の時間ではございませんので、部外者はお引き取り下さい。 [-]門から出て来た一人の修道士が、私の前に立ちはだかった。眼差しは刺々しく、まるで悪者でも見るかのようだ。 [-]私のイメージでは、修道士ってみんな親切で、こんな鋭い目つきをするのもそうそうないような……。大真面目に思い当たる節を考えてみたが、どう考えても私がここに来るのは初めてだし、罪に問われるようなことはしてないはず。よし、なるべく下手に出て聞いてみよう。 [プレイヤー]すみません、シスターリリィにお会いしたいのですが、どうすればよいでしょうか? [修道士]シスターリリィは本日不在にしております。お会いしたいのであれば、日を改めて下さい。 [プレイヤー]重ねてお尋ねして恐縮ですが、いつ頃いらっしゃいますか? [修道士]お答え出来ません。 [-]修道士は頑なで、全く融通が利かない。今日はもう取り付く島もなさそうだ、さっさと戻ろう。イブさんが来たことも知らないんだとしたら、どの道そうスムーズには会えないだろうし。 [-]ところが、立ち去ろうとした時、かすかに修道士が文句を言っている声が聞こえた。 [修道士]どうしてここ最近、不審な奴らがシスターリリィをこうも捜しにくるんだ……あの異教徒ども、四貴人に手を出そうとでも言うのか…… [-]その様子からして、リリィさんを捜しに来たのは私だけではないようだ。では、他に誰が? イブさんがもう自分でリリィさんを探し出したとか? [-]それに、四貴人に手を出す異教徒とはどういう意味だろう? だんだんと全貌が明らかになりつつあった四貴人伝説だけど、またしても神秘のヴェールに包まれちゃったな。 [-]カフェに戻ると、予想よりも早く、全く見かけなかった人物……イブさんが、意外にもカフェに来ていた。礼奈ちゃんたちに囲まれて、ノートに何やら書き付けている。 [-]私がやって来たのを見て、とても嬉しそうに手を振った。 [プレイヤー]みんな、何してるの? [七海礼奈]イブさんに麻雀の打ち方を教えてるの。 [一姫]にゃ~、これを覚えておけばいいにゃ。「運が悪い時は、とにかくタンヤオ」にゃ! [雛桃]むう、「うん」……ふぇ、うさぎさん、「運」の漢字、これで合ってるのです? なぜか急にわからなくなっちゃったのです~…… [-]頭を下げて雛桃の手元を見てみると、たどたどしい字で「運」と書いている。何かのメモを取ってるのかな。 [雛桃]うさぎさん、今日雛桃は、皆さんから、い~っぱい、麻雀のコツを教わったのです。次打つ時は、雛桃がぜ~~ったい勝つのです。 [-]少女たちが熱心に麻雀の戦略を練り、イブさんと雛桃が時々顔を伏せて真剣にノートを取っている様子を見ながら、私は黙ってその場を立ち去った。 [-]ピークの第一波が来たので、彼女たちは尽きることのない討論をやめて、仕事に取り掛かった。 [-]イブさんに、今日の出来事――修道院に行ってみたものの、リリィさんには会えなかったこと――を大まかに伝え、住所を書いたメモを彼女に渡した。 [-]イブさんは顔を伏せて、親指で繰り返しメモの裏側をこすっていたけど、しばらくしてようやく顔を上げ、軽やかな声で「ありがとう」と言った。彼女の目は、少し赤くなっていた。 [イブ・クリス]そもそも私たちは偶然出会っただけなのに、貴方は十分すぎるほど親身になって助けてくださって……こんな助けを受けられるなんて、思ってもみませんでした。 [イブ・クリス]プレイヤーさん、貴方に出会えて、本当に良かった! [-]今にも涙が溢れそうなのか、イブさんは振り返って目元を擦った。もう一度私のほうへ向き直った時、最初に出会った時のようなスマートで明るい顔つきになっていた。 [イブ・クリス]これから、一飜市にいる間、一緒に麻雀を打って、ご飯を食べて、仕事をして、遊んで……ああ、何でもいいんですけど、つまり! 私たち、何でも一緒に、力を合わせられる、いい友達になりましょう、プレイヤー! [プレイヤー]うん! [-]イブとリリィさんの結末は、私が期待してたような、あっさり再会、そして帰郷……ということにはならなかった。でも、イブは、もうしばらく一飜市に滞在するそうだ。もうしばらくいられるなら、リリィとのわだかまりを解消し、そして……私たちが仲良しの友達になるには十分だろう。 [-]あ、でも。私達って、もう既に友達になってるんじゃ……!? だったら、これからは、もっとたくさん麻雀を打ちたいな。 [-]そして、イブの願いが早く叶いますように。