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人に迷惑をかけないのもある意味美徳、やっぱり男衆に対処してもらおう

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私は「幾度春」には不案内だ。万が一狐を見つけられず逃げてしまったら、むしろ迷惑をかけてしまう。 私が躊躇している間に、男衆が駆けつけた。まずおもちに踏みつけられた茶菓子とお茶を新しいものに替え、それから東城さんの指示を聞いてその場を去った。 [東城玄音]えろうすんまへん。こんな突拍子もないことが起こるなんて思いまへんどした。おもちはあの人らに探すよう言っておきました。 [東城玄音]ささ、旦那さんは安心してお茶を楽しんどくれやす。……はあ、先ほどのお菓子は複雑な工程を経て作られた「百花焼き」だったんどす。「幾度春」特製のお菓子で、大事なお客様をご招待する時だけご用意するんどす。 [東城玄音]今回は特別に旦那さんに味わっていただきたかったんどすけど、それをあの子に滅茶苦茶にされるとは思いまへんどしたわ。 少し残念に思ったが、屏風の向こうで誠心誠意に謝る女性を責めることは出来なかった。こういうのは麻雀と同じで、一定の運要素があるものだ。 それからは、東城玄音と麻雀についてのんびりと話し込んだ。彼女の麻雀に対する見解はとてもためになった。 いつの間にか終わりの時間になっていた。私がそれに気づいた時には男衆が扉の外まで来ていて、私に声をかけた。 東城玄音は人の気持ちを察することも、話題を振ることも上手だ。彼女の傍にいれば、どんな人でも楽しい時間を過ごすことが出来るのだろう。それこそ彼女の魅力であり、誰もが彼女とお茶がしたいと思う理由だろう。 男衆の指示を受けて立ち上がり、帰る準備をして別れを告げようとすると、東城さんが急に私の服装について尋ねてきた。 彼女と車に乗り、「Chaque Jour」に戻って着替えを済ませた。今日見聞きしたことを報告しようとすると、脱いだ服の肩のあたりから、彼女が注意深くある物を取り出しているのが見えた。 [ノア](ショートメール)超小型カメラ。報告の手間を省くため、今日のことは全部記録しておいた。 いつの間にそんな物を取りつけたのかと聞きかけて、私が東城玄音に会いに行く前に、ノアが私の肩を叩いたことをふと思い出した。まさにあの位置だ。 言いかけてはやめを繰り返し、何度かツッコミ台詞を口ごもったが、最終的に諦めた。ここ数日で、私はすっかり「ストリクス」のやり方に慣れてしまったらしい。 まあいいか。玖辻に報告する手間が省けたのだから。 家に帰り、麻雀の誘いを全部断ってベッドに倒れ込んだ。任務を遂行出来たからだろうか、開放的な気分だ。 このタイミングで、玖辻からショートメールが届いた。 [玖辻](ショートメール)今日のアンタの働きには満足だ。数日後、取引の仕上げのために迎えに行く。 実を言うと、これを通して彼がどんな有益な情報を得られたのか見当もつかなかった。あの伝説の四貴人に近づくうちに謎が謎を呼び、それらの謎が互いにぶつかりあって溶け合い、また新たな謎を生み出している。 いつか、これらの真相がわかる日が来るのかもしれないな。そう思いながら、次第に眠りに落ちていった。