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「猫又への困惑」

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一姫の物語 「猫又への困惑」 「猫又への困惑」 森の外では、少年がハラハラと旅人の帰りを待っていた。刻一刻と時間は進んでいく。もうあいつは妖怪に食べられてて二度と帰ってこないんじゃないかと思ったその
時、森の暗がりからボロボロの服をまとった男が熟睡している猫を抱えて出てきた。
「お、おまえ、妖怪に遭ったのか!」と飛び出した少年。旅人の懐にいる子猫をちょろっとのぞきこんでみたが、何があったのかさっぱりわからなかった。
「噂はデマだったな。この森に妖怪なんかいなかったよ。この、迷い込んだ子猫以外にはね。」
「でも……」
「大体、もし本当に妖怪なんかいたら、俺が無事に帰れると思うか?ははははっ」
旅人の話は全く信じていないが、服がボロボロになっていても案外旅人の体に傷は無かったため、少年はそれ以上反論できなかった。
こんな見るからに弱そうな人間でさえ、森から生きて帰ってこれたんだ。この森は噂に聞くほど危険では無いのかもしれない。
「もう安心して森に入っていいよって、みんなにも教えてあげてな!」そう言って旅人は少年の肩を軽く叩くと、村とは反対の方向へ去っていった。姿が見えなくなる
前に、「ちぇッ、こいつ本当に容赦ないな。」と、小さな独り言を漏らして。
(こいつって、そのねこのことなのか?)
未だに混乱している頭を抱えながら、少年は思った。まったく訳の分からない一日だ。なにが一番訳が分からないかと言ったら、あの旅人の言葉だ。何をもって妖とい
えるのか? 何をもって人といえるのか?
妖が人を食べないで人と一緒に生活することなんて、本当にできるのかな。
絆レベル3