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郊外にある露天市場に行く

雀士: 
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[サラ]ここ、話題の露天市場?
[player]そうです。
サラさんたちを連れて、郊外にある露天市場に来た。以前ここに来た時に、布や裁縫用具を売ってる屋台を見かけた。ここで売られている商品は、町の店よりそこまで品質は劣らないのにとても安いから、ついつい来てしまう。
ガイドに店の場所を聞いて、まずはそこへ直行した。
[サラ]まぁ、中々いい品揃えで目移りしちゃいそう~。とっても素敵なお店みたいね。ありがとう。
[player]気に入ってもらえて何よりです。欲しいものが見つからなさそうなら、この辺りは全部生地屋ですけど。
[サラ]この一店舗だけでも充分長居してしまいそうよ~。
[player]それなら、他はまた今度ってことで。あれ? リリアちゃんはあまり興味がないのかな?
[リリア]わたし、買いたいものないから、ここでまつ。
[ミーちゃん]にゃ~。
リリアちゃんはしゃがみこんで地面に落ちている小石で遊び始めた。ミーちゃんも店内には興味が無い様子で、リリアちゃんの隣で日向ぼっこを楽しんでいる。
[サラ]リリアちゃん、確か衣装さんが、この前ミーちゃんにも新しい衣装を作るって言ってたの。 お姉ちゃんは他の団員さんの衣装の布を探すから、リリアちゃんはミーちゃんに似合う布を選んでもらえるかしら~?
[リリア]ミーちゃんに? ……わかった。
[リリア]どう? ミーちゃん、これもカワイイよ。えへへっ。
リリアちゃんはミーちゃんを抱っこして棚の間を歩き回り、時折完成品の服を眺めている。こんなに楽しそうなのに、リリアちゃんはどうしてお店に入ろうとしなかったんだろう?
それに、猫が服を着ると落ち着かないのは、サラさんなら知ってるはずだし、これまでミーちゃんに服を着せたこともなかったはず。今の会話は何だったんだろう。
[サラ]……ねぇ? あなた、大丈夫~?
[player]あぁ、ごめんなさい。つい考え込んじゃって。どうかしましたか?
[サラ]この組み合わせ、いかがかしらと思って。もし疲れてるのなら、もう切り上げるから、この後どこかでゆっくり何か飲みましょ~。
[player]ううん、急がなくていいですよ。本当に考え事してただけですから。
[player]どれどれ……。この組み合わせだと、緑がやや暗い気がします。もう少し明るい緑にすると、もっと良くなると思うな。
[サラ]私もちょうどそう思ってたの~。もう少し探してみるわ~。
[player]これなんてどうですか?
[サラ]あら、いいじゃない。あなたと一緒に来て本当によかったわ~。
[player]ならよかった。そう言えば、サラさんたちの衣装って、みんなこんな風に自分で一から作ってるんですか?
[サラ]私はそこまで器用じゃないわ、サーカスの衣装スタッフさんがいつも作ってくれてるの。自分で布を選ぶのは、この方が安いから。それに、材料を選びながら出来上がった服を想像するの、面白くて好きなのよ~。
[サラ]普段は一人だけど、今日はせっかくあなたがいるんだし、もっとアドバイスちょうだいね~。
[player]出来る限り頑張ってみます。メインカラーがこの二色なら……。
サラさんと数種類の布を見比べながら、大まかなデザインや生地の質感、色合いまで決めた。残るは装飾品、サラさんはリリアちゃんに意見を聞いた。
[サラ]リリアちゃん、お姉ちゃんのお洋服に付けるもの、何色がいい?
[リリア]うーん、こしにつけるお花……これなんてどうかなぁ? ミーちゃんもきれいだと思うでしょ?
[ミーちゃん]ニャー!
[サラ]あら、ミーちゃんもこれがいいのね。じゃあ決まりね。ここまで決められれば、後は衣装さんにお任せでいいわ~。
[player]新衣装ってことは、新しいダンスもあったり? なんだかわくわくするなあ。
[サラ]ウフフ、衣装ができたら一番最初にあなたに見せるわ。今日たくさん付き合ってくれたもの。
[player]やった!
[リリア]お姉ちゃん……。リリアも、リリアだって、楽しみにしてるのに。
リリアちゃんがサラさんの服の裾を握って甘えると、サラさんは宥める様にリリアちゃんの頭を撫でた。
[サラ]もちろん、リリアちゃんにも見せるからね。
材料を買い揃え、しばしの間みんなで近くを散歩した。
神社へのお土産も確保し、サラさんたちの荷物を持って二人をサーカスまで送ろうとしたら、サラさんはサーカスとは反対方向に歩き始めた。
[player]サラさん? どこに行くんですか?
[サラ]リリアちゃんのお家よ。最近は私もそこに泊まってるの。
古い市街地を通り抜け、下町の郊外にある開けたエリアに着いた。山の麓近くのここは馬車がたくさん停まっていて、テントの前で忙しくしている大人たちや、リリアちゃんのような子供達の姿があちこちに見られる。どうやらここは彼らの居住地らしい。
[サラ]ただいま。
サラさんがテントの前で挨拶すると、中から中年の夫婦が出てきた。リリアちゃんは男性の懐に飛び込み、「ただいま!」と嬉しそうに言った。
もしかして、二人はサラたちのご両親? でもリリアちゃんも二人も茶色の瞳をしているが、サラだけは違う色合いの瞳なのが気になる。
[サラ]あなた、今私達がどんな関係なのか気になったわよね。
[player]顔に出てました? あのお二方はサラさんのご両親じゃ……?
[サラ]ええ、昔サーカスの旅で出会ったの。仲良くしていただいたから、ここで再会出来て本当によかったわ~。叔父さん達が今日は忙しいからって、リリアちゃんの面倒を頼まれたのよ~。
[player]そういうことだったんですね……。リリアちゃんとは実の姉妹だと思ってました。
[サラ]まぁ、そう言ってもらえて嬉しいわ。同郷だから、姉妹と呼び合っているの。私達の習慣なのよ。
[サラ]もちろん、リリアちゃんたちだけじゃなく、ここにいるみんなが同郷よ。ああでも、「異郷の民」なのに、「同郷」ってちょっと変よね。
[player]異郷の民?
[サラ]リリアちゃん、PLAYERさんにここの案内をするから、ミーちゃんのことお願い~。
[リリア]はーい!
サラさんと一緒に馬車とテントの間を歩きながら、彼女の故郷について聞いた。
[サラ]私達って、色んな国の言葉で色んな風に呼ばれてるの。古き砂漠の国をルーツとする「砂の民」や、肥沃な土地からやってきた「黒土の民」、雪山の寒さに耐えられず降りて来た「高原の民」なんてのもあるわね~。
[サラ]でもね、それは全部正しくないの。だって、私達自身も本当の故郷がどこなのか忘れてしまったから。
祖先が馬車で世界を旅していたのは、どこの国でも受け入れられなかったから。そしてそれがもとで、「異郷の民」と名乗るようになった……と、代々伝わってるわ。
[サラ]私の祖父母は若い時に旅に疲れて、今も住んでいる土地で馬車を停めた。気づけば数十年が経ち、私の母、そして私が生まれた。だから一応、私には「故郷」があることになるわ。
[サラ]祖父母も、親も旅のない暮らしが馴染んでるみたいだけど、私はどうしてもそうならなかった。祖母にも言われたの、私は性格も生き方もご先祖様そっくりだって。だから私はサーカスに入って世界中を旅しているし、こうしていろんな国や街の「同郷」にも出会えるのよ~。
いつ次の旅に出るかわからない「異郷の民」だからこそ、サラさん達はこういう出会いを大事にしているんだな。彼女の話によると、サーカスの移動先に「異郷人」の集落がある時は欠かさず訪問しているそうだ。
[player]サラさんはこういう生活が好きなんですね。
[サラ]ええ、好きよ。あなたはどう思う? やっぱり変に思うかしら?
[player]変って言うか……。