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レストランへ

雀士: 
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子を知るは父に若くはなし。それに、撫子さんが最近話題にしていた、昔誕生日パーティを開催したレストランだ。これは行って確かめなくては。
そのレストランは、一飜市の都心部にある大型ショッピングセンターに入っている。ネットで見たことはあったが、実際に来たのは初めてだ。
ガラン――と店のドアを開いた瞬間、着ぐるみ風の制服を着た店員さんが満面の笑みで私を迎えた。
[店員]あらあら、これは可愛いお客さまがいらっしゃいましたね! ようこそ「KAWAII☆PARADISE」へー!
[player]あはは、どうも……。
[店員]申し訳ありません、現在番号順でご案内しておりますので、こちらで今しばらくお待ちください! お待ちの間、よろしければスタッフと麻雀対決しませんか? もし勝てたら、本日のお会計は全て15%オフですよー!
サービスがいいとは聞いていたが、順番待ちの時点で良過ぎでは? これなら撫子さんがここを選んでもおかしくないか……。
麻雀は正直に言うと打ちたいところだけど、今の目的は調査だ。撫子さんの写真を見せながら事情を説明すると、店員さんは何かを思い出したようにポンと手を打った。
[店員]あ〜! こちらのお客さまなら、先週末にいらっしゃいましたよ。
[player]先週末、ですか?
それはちょっと意外な回答だった。
[店員]はい、週末はスペシャルイベントをやっておりまして、店内で看板メニューの料理教室を開催しております。こちらは、ご自身で作られた料理を店内または持ち帰りで食べられるというイベントなんです。こちらはご予約のお客様限定となっておりまして、先週にこちらのお客様がいらっしゃったと思います。
[店員]撫子様は、オーラがあって印象的な方だったというのもありますが、あの日はちょっとしたハプニングがありましたので、恐らく私の記憶にも間違いは無いかと……。
[player]ハプニング……?
[店員]はい、撫子様は、料理教室の時も非常に真剣なご様子で、実際に作られたお料理も店で出せるほどの出来栄えだったのですが、どうやらお気に召さなかったようで、もう一度作り始めたんです。どなたかとご一緒にお食事されるんですかとお聞きしたのですが、むっとしたご様子で答えていただけませんでした……。
[店員]もちろん、スタッフとして、このようにプライベートのことを聞くべきではなかったと悔やむばかりですが……。
店員さんはとても申し訳なさそうにしている。そう言えば撫子さん、教習所の時も、スライド資料の修正中は集中しすぎて私の話全然聞いてなかったな。
[player]多分ですが、それは料理に集中するあまり、店員さんの声が聞こえてなかっただけだと思います。撫子さんはそんなことで怒る人じゃないと思いますし……。
[店員]そうでしたか! 実は撫子様は前回の料理教室の直後に、今週末の同じメニューの料理教室を再度予約されてまして、その際に謝ろうと思っておりました……。
[player]ん? 今週末に予約?
[店員]はい。先ほどお客様が、今週末は撫子様のお誕生日だと仰ったのも考えますと、皆さんのために看板メニューを振る舞うおつもりなのではと思います。
[店員]お客様も、撫子様のためにサプライズを用意したいとのことでしたよね。でしたら、お二人の素敵な思い出のためにぜひ私共スタッフにも協力させていただきたいです。
[player]それは助かります……。
食事を終えてレストランを出て、私はスマホを取り出した。撫子さんの誕生日パーティーの会場はここだろうか。