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それはまた別の、晴れた週末

jyanshi: 
categoryStory: 

それはまた別の、晴れた週末。予兆も何もなく、私はまたしても、家を出るやいなや撫子さんにバイクの後部座席に乗せられた。 [撫子]ヘルメットをきちんと被りなよ、あと私の腰をしっかり掴んでおきな。 [player]デジャビュが……今回はどこへ? [撫子]今度こそ後悔させないから。 [player]このやり取りも前にしたような……。 ブウウン——。 エンジンが唸りをあげ、私の声を完全にシャットアウトした。 一飜市の環状線を通過し、交差点で信号待ちをする間、撫子さんから今回の目的地について聞き、現地の様子をざっくりとイメージした。 一飜市の郊外にある広い野原で、曲がりくねりながらゆったりと流れる川がいくつか流れていて、夕暮れ時にはいくつもの夕陽が水面に反射する光景が見られる場所らしい。 [player]まるで絵に描いたみたいな黄昏なんだ。 [撫子]そう、絵のように美しいところさ。ところで、PLAYERはあの時の約束を憶えてるかい? [player]二人でツーリングだっけ? [撫子]ああ、昔行った場所を昨夜リストアップしたら、そこがぴったりだと思ったんだ。そしたら待ちきれなくなって、今日行っちまおうと思ってね。 [player]撫子さんの「思い立ったら即行動」にはもう慣れっこだよ。それで、具体的にはどこにあるの? [撫子]あたしに付いてくればいい。 [player]わかった。任せたよ。 しかし、市街地から出てすぐ、道標のない分かれ道で撫子さんはバイクを止めた。 [撫子]……。 [player]あれ、どうしたの? [撫子]いや、この前来た時は一本道だったはずなんだけど…。 [player]そう……? いかにも真新しい道路を見て、私は違和感に気づく。 [player]この前って、どれくらい前? [撫子]多分……五、六年くらい前だな。 [player]ご、え? [player]……まあ、それくらい経ってたら道が変わっててもおかしくないね。私が後ろでナビするから、目的地の名前とか住所を教えてくれる? と、ナビアプリを開いて目的地を検索しようとした私に、撫子さんは頭を横に振りながら答えた。 [撫子]適当に走ってったから、大まかなルートしか覚えてない。 [撫子]……そうだ。 [撫子]今日は思いつくままの道を行こう。 [player]んん? [撫子]そうと決まったら、さっさと選ぶとしようか。PLAYERはどっちへ行きたい? [player]え……? 撫子さんはこの案で行こうと決めたらしい。こうなったらもう選ぶしかない。