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シナリオ

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仮面の真実 シナリオ シナリオ プロローグ [ルルーシュ]こ、これは、どういうことだ……?
[紅月カレン](おかしい。さっきまで潜水艦の中にいたはずなのに、ここはどこなの?)
[枢木スザク](どこなんだ、ここは?僕はランスロットのコックピットにいたはず……)
[C.C.]……。
[ルルーシュ](カレンにスザク。それにC.C.まで……。これは夢なのか? 一同に会するはずのないメンバーが同じ卓を囲んでいるなんて……)
[三人](いったい、何が起こっている?!)
[C.C.]四の五の言ってないで、始めるぞ。
[ルルーシュ]始める? 始めるって何を……?
[C.C.]卓を囲んでいるんだ。やることは一つだろう。
[C.C.]麻雀さ。
[枢木スザク]ちょっと待ってくれ。少し状況を整理させてくれないか?
[紅月カレン]そうよ。私たちは確か……。
本来、敵同士であるはずの枢木スザクと紅月カレンが同じ部屋にいる。そんな不可思議な状況を把握しようと、ふたりは部屋を見渡し、自分がどうしてここにいるのか思い出そうとした。
[枢木スザク](……駄目だ。頭の中に靄がかかっているみたいに、肝心なことを思い出せない。僕は確か……)
[枢木スザク](そうだ。ゼロとともに他国に制圧されていた基地を奪還した。そして、租界の政庁に戻ろうとしたんだ。)
[紅月カレン](私は確か……、潜水艦でゼロがスザクと協力して基地を取り戻すところを見ていた)
[紅月カレン](それなのに、今はアッシュフォード学園の制服で知らない場所にいる)
[紅月カレン](何が起きているっていうの……? こうなったら少し探りを入れてみるしかない)
[紅月カレン]ね、ねえ、スザク。あなた、ブリタニアの軍人でしょ。確か、ニュースで基地にいるって見たんだけど、どうしてここに?
[枢木スザク]さあ? 僕にもわからないな。それより君はどうしてここに?
[紅月カレン]私にもわからないの。気がついたらここにいて……。
[枢木スザク](カレンが嘘をついているようには見えない。と、いうことは、他の誰かの……)
[枢木スザク](彼女が知っている可能性はあるか。彼女はナリタでゼロを庇った少女。もしかしたら、ゼロと何か繋がりがあるのかもしれない。だが、迂闊なことは聞けない)
[紅月カレン](C.C.……。どうして、あの女まで……。でも、迂闊なことは言えない)
スザク&カレン
[枢木スザク&紅月カレン](なぜなら……)
[ルルーシュ]な、なあ、お前たち。どうして、そんなに気が立っているんだ?
[枢木スザク&紅月カレン](このルルーシュがいるから……!)
[枢木スザク](ルルーシュはクラスメイトのカレンが黒の騎士団だとは知らない。それに、あの時に助けた少女がゼロと関係しているかもしれないことも……)
[紅月カレン](ルルーシュは私が黒の騎士団とは知らない。それにC.C.がゼロに繋がる人間であることも……)
[枢木スザク](余計なことを知ってしまえば、ルルーシュに危害が及ぶ可能性がある)
[紅月カレン](無関係なルルーシュを戦いに巻き込むわけにはいかない。それなら……)
[紅月カレン]ご、ごめんなさい。ここがどこだかわからなくて混乱してて……。
[枢木スザク]ああ。僕もだ。ルルーシュはここがどこだか?
[ルルーシュ]いいや。俺もさっぱりだ。買い物に出てたら、いつの間にかここにいたんだ。
[ルルーシュ](スザクもカレンもこうなった原因がわからないようだな。とは言え、それは俺も同じこと。基地の一件が解決したと思ったら、ここにいた)
[ルルーシュ](そうなると、この状況を把握している可能性があるのはあいつだけか)
ルルーシュがC.C.の方を見ると、卓上の麻雀牌を手に取って眺めている。
[C.C.]……ふっ。お前たち、話は終わったのか? だったら、早く打とうじゃないか。せっかく雀卓を囲んでいるんだしな。
[紅月カレン]はあ?
[枢木スザク]麻雀を? こんなよくわからない状況の中で?
[ルルーシュ]ねえ、君とはあの時のシンジュク以来だね。無事で良かったよ。
[C.C.]……。なんだ? 何が聞きたい?
[ルルーシュ]君はここがどこなのか知っているのか?
[C.C.]さあ、どこだろうな。
[ルルーシュ]どこかも知らないのに、不思議に思わないのかい? この状況を……。
[C.C.]と、言われてもな。わからない以上、どうしようも出来まい。
[ルルーシュ](C.C.は答えたくないことは答えないが、こんな時に嘘をつく奴ではない。と、なると、俺たち以外の誰かが、ここに俺たちを集めたことになる)
[ルルーシュ](いったい誰が、何のために……)
[C.C.]今はっきりしていることは、私たちが雀卓を囲んでいる、という事実だけだ。なら、あれこれ考えるより、まずは一局打つ方がいい。
[C.C.]なあ、そこのお前たちもそう思うだろう?
C.C.は不意に部屋の隅の方へ話しかけた。ルルーシュたち三人も、その言葉に促されて部屋の隅へと目を向ける。そこには、凡そルルーシュたちのいる世界には存在しないであろう者たちが様子を窺がっていた。
[一姫]……にゃ! ワン次郎、もう喋っていいってことかにゃ?
[ワン次郎]空気がめちゃくちゃ重かったから話しづらかったけど、さすがにもう大丈夫そうだワン。
[かぐや姫]急に神社に入ってきたのはこやつらの方じゃ、なぜわらわがかしこまる必要がある?
[ワン次郎]客人に対する礼儀だワン。
[ルルーシュ]俺の見間違いでなければ、犬が喋っている……。
[枢木スザク]見間違いじゃないよ。僕にもそう見えている。
[紅月カレン]私たち、どうなっちゃたの?
[C.C.]で、この卓は使っても良いのか?
[ワン次郎]お、おう。今日は他に使う人もいないワン。
[ルルーシュ]いや。よくそんなに冷静でいられるな。今は麻雀卓のことなどどうでもいいだろう。
[枢木スザク]確かにそうだね。あの、不躾で申し訳ないのですが、ここが一体どこなのか、あなたたちが誰なのか、教えてもらえませんか?
[ワン次郎]俺様はワン次郎だワン。
[一姫]一姫は一姫にゃ!
[かぐや姫]わらわはかぐや姫、ここの神様なのじゃ~。
[紅月カレン]か、神様……?私たちいつの間にか死んじゃったの?
[一姫]そうじゃないにゃ!
[ワン次郎]ここは一飜市の魂天神社だ。具体的にどの辺かって言うと……ま、そういう細かいことは置いといて、とにかく麻雀ですべてを解決する場所だと思ってくれワン。
[ルルーシュ]麻雀ですべてを解決する……?どういう意味だ?
[一姫]そのまんまにゃ。ここでは麻雀で全てを決めているのにゃ。麻雀で勝てば何でも願いが叶うにゃ!
[ルルーシュ]願いがなんでも叶う……。そんなことが現実にあるのか?
[C.C.]ほう。麻雀に勝てば何でも願いを叶えられる、か。なら、麻雀に勝てば、私たちが元いた世界に帰ることが出来るのか?
[かぐや姫]ぐひひ。その実力があればの話じゃがの。
[紅月カレン]麻雀に勝てば何でも願いが叶うなんて、そんな馬鹿げたこと……。
[ルルーシュ]いいや。そうとも言い切れないんじゃないか?俺たちが不思議な力でここに来たのは紛れもない事実だ。
[枢木スザク]確かに。そうであるなら、彼らが示す手段を確かめてみる価値はある。
[紅月カレン]あんたたち、本気で言ってるの?
[ルルーシュ]ああ。本気だ。馬鹿げてはいるが、置かれている状況が現実である以上、先入観に囚われず、事実だけを見定めていった方が確実だ。
[枢木スザク]僕もルルーシュに賛成だ。解決できる方法が残っているなら、まずは試したい。
[紅月カレン]呆れた。あんたたち、意外と柔軟な考え方をするのね。
[ルルーシュ]どんなことであろうと、あらゆる可能性を考えておくに越したことはないからな。
[ルルーシュ](以前も俺たちは、人智を超えた力で式根島から神根島に飛ばされている。そういったシステムが世界にあったとしてもおかしくはない)
[ルルーシュ](それに、元の世界に帰れるなら一刻も早く戻らなくては……。俺にはナナリーが……)
[紅月カレン]だったら、私はここで見ているわ。人数も足りているみたいだし。
[かぐや姫]そうか。ならば、わらわが付き合うてやろう。神様と対局出来ることに感謝するのじゃぞ。
[ワン次郎]お前ら、麻雀はやったことあるのかワン?
[枢木スザク]昔、父さんたちがやってるのを見たことはあるけど、細かいルールは知らないな。
[ルルーシュ]俺は知識として基本的なルールは知っているが、打ったことはないな。
ワン次郎と一姫は、麻雀に慣れていないルルーシュたちに、牌を卓に並べつつ大まかなルールを説明し、観戦席に座った。
[一姫]そういえばワン次郎。あの制服はどこの学校のかにゃ? 見たことないにゃ。
[ワン次郎]知らね。よくわからんとこからここに来て麻雀を打つ学生は、奴らが初めてじゃないだろ。お前もそろそろ慣れろワン。どうせ、何か訳でもあったんだろうワン。
[かぐや姫]さあ、始めるとしよう。
[C.C.]ふふっ。久しぶりの麻雀だ。腕が鳴るな。
[ルルーシュ]よろしく頼む。
[ルルーシュ](相手は、神を自称するかぐや姫、C.C.、スザク、そして俺。まずは、やってみるか)
[一姫]それじゃ、対局スタートにゃ!
シナリオ インターローグ [紅月カレン]なにあれ?あのかぐや姫って人、すごく強い……!
[かぐや姫]ぐひひぃ~。
数局の東風戦を経て一位に立てたのは、かぐや姫ただ一人だけだった。
[C.C.]さすが神を自称するだけのことはある。名乗るに相応しい実力を備えているのだな。
[枢木スザク]くっ……、完敗だ。
[ルルーシュ]ふむ。チェスとは違う戦術が必要だな。少しわかってきたが、まだコツが掴み切れないか。
[かぐや姫]そこの黒髪のお主、ルルーシュと言ったか。汝は中々筋がいい。しかし、栗毛のお主はダメじゃ。基本がなっていない。
[枢木スザク]基本が、か。ワン次郎さん。麻雀の実力差をすぐに埋めるのって、やっぱり難しいですか?
[ワン次郎]そりゃそうだワン。けどお前の場合は、かぐや姫の言っている通り、基礎の時点で問題があるワン、牌効率とかな。
[枢木スザク]それ、良ければ教えて頂けませんか? 今のままでは勝つのは難しそうなので……。
[ワン次郎]できなくはないが……。いいだろう、教えてやるワン。
[紅月カレン]なら、私もいい?私にも教えてくれないかな、麻雀の基礎。
[一姫]それなら、カレンには一姫が教えてあげるにゃ。
[紅月カレン]それは助かるよ。ありがとう、一姫。
[C.C.]ふむ。あいつらが基礎練習をするのなら、私は少し抜けさせてもらう。
[かぐや姫]そうじゃのう。わらわも勝ちっぱなしでさすがに疲れたのじゃ。休んだ後で、汝らがわらわをもっと楽しませてくれたら良いのじゃがな~。
[かぐや姫]汝も本気を出していなかったようじゃしな。
[C.C.]ふふっ。どうだろうな。それじゃあ、また後で。
[かぐや姫]ぐひひ。何とも掴みどころのない女じゃのう。
[ルルーシュ]……。
[ルルーシュ]俺も少し、外の空気を吸ってくる。
[ルルーシュ]さっきの対局では、あのかぐや姫というのが勝ったから、願いが叶う云々の信憑性はわからず仕舞いだったな……。
[ルルーシュ]しかし、見たところ、ここは俺たちが元いたエリア11でないことは確かだ。租界もなければ、そもそも元の世界の地形と合致しているかも怪しい。
[ルルーシュ]だからと言って、五感がはっきりしていることから、夢や幻の類でもない。すなわち、俺たちは実際に、この別の世界に転移してしまったんだ。
[ルルーシュ]本来ならもっと驚くべきことなんだろうが、あの神根島での一件を経験している以上、馬鹿な話だと片付けるわけにもいかない。
[ルルーシュ]馬鹿な話と言えば、かぐや姫たちが言っていたこと。麻雀に勝てば願いが叶う。元の世界に戻ることが出来るんだ。単純ではあるが、それゆえに難しい。
[ルルーシュ]あのかぐや姫の実力は本物だ。それにC.C.も経験があるのか、侮れない。奴らに勝つには経験を積み、コツを掴む必要がある。
[ルルーシュ]くそっ。こうしている間にもナナリーは元の世界で俺の帰りを待っているというのに……。
[ルルーシュ]……待てよ。もし、かぐや姫たちが言う通り、どんな願いでも叶うというのなら、ナナリーが安心して暮らせる世界も可能なのか……?
[ルルーシュ]……ふっ。それこそ馬鹿な話だな。願いは自分で叶えるしかない。そのために俺は力を手に入れたはずだ。
[ルルーシュ]麻雀も同じこと。自分の力を、知恵と技術を使って勝つしかない。そのためには……
[ルルーシュ]なんだ、今の音は? こっちから聞こえたが……。
ガタンと大きな音のした方へ庭を歩くと、路面の石にぶつかり立ち往生する車椅子の少女がルルーシュの目に留まった。
[七海礼奈]あれ? あれ? ……車輪が動かない……?
[七海礼奈]一姫ちゃーん! ワン次郎さーん!誰かいませんかー?
[ルルーシュ]ああ。少し待ってくれないか。車輪が石の間にはまり込んでいる。こちらから引けば……、よっと。
[七海礼奈]あ……、ありがとうございます。すみません。お手間をとらせてしまって……。
[ルルーシュ]気にしなくていい。大したことはしてないさ。それよりもこの神社に用事?
[七海礼奈]はい。巫女の一姫ちゃんと約束したんです。うちのカフェの新作スイーツをみんなで試食するって……
[ルルーシュ]そうか。彼女なら今客室にいるはずだ。そこまで送るよ。
[七海礼奈]一姫ちゃんのお知り合いなんですか?
[ルルーシュ]まあ、ね。さっき知り合ったばかりだけど。俺はルルーシュ・ランペルージだ。よろしくな。
[七海礼奈]はい。私は七海礼奈と言います。ルルーシュさんは一姫ちゃんのお客さんなんですね。
[七海礼奈]良かったら、新作スイーツの試食をご一緒しませんか?さっきのお礼も兼ねて……。
[ルルーシュ]ははっ。本当に気にしなくてもいいのに。
[ルルーシュ]俺の妹も君と同じように足が不自由なんでね。車椅子が動かなくなったら困るのはよくわかるんだ。
[七海礼奈]そうなんですか……。でも、やっぱりルルーシュさんは優しい人だと思います。
[ルルーシュ]ふっ。そんなことはないさ。でも、ありがとう。
[七海礼奈]……。やっぱり、ルルーシュさんに新作スイーツを試食してもらいたいです。もしよかったら妹さんも……そういえば、妹さんは今どちらに?
[七海礼奈]もしかして、一姫ちゃんのお客さんということは……。
[ルルーシュ]ああ……俺は別の遠い場所から、ここに来たんだ。妹はそこで俺の帰りを待っている。
[七海礼奈]そうですか。心配ですよね、妹さんのこと。
[ルルーシュ]だから、俺はどうしても戻らねばならない。でも、麻雀で勝たないと妹の待つ場所には戻れないみたいなんだ。
[ルルーシュ]とは言え、麻雀というのは初めてでね。さっきもかぐや姫という人と打ったんだが、まったく敵わなかったんだ。
[七海礼奈]ふむぅ、どうやらルルーシュさんも魂天神社の対局に参加するみたいですね。このイベントは定期的に開かれていて、よくルルーシュさんみたいな他の所から来た雀士さんたちが参加するんです。
[七海礼奈]そうですね……。良かったら私が教えましょうか?
[ルルーシュ]君が? 麻雀を打てるのかい?
[七海礼奈]ええ。この一飜市にいる人ならほとんどが打てますよ。私も同級生やお友だちと一緒に打つんです。
[ルルーシュ]友だち、か……。助かるよ。是非、教えてくれないか。
[七海礼奈]わかりました。
[C.C.]……やはり繋がらない。Cの世界にアクセスできないということは、ここは、本当に元の世界とは別の世界らしい。
[C.C.]麻雀に勝てば、願いが叶うというのも、あながち無い話ではないのかもしれないな。
[C.C.]……ふっ。何を期待しているんだ、私は。たとえ、願いが叶う力があったとしても私の願いを叶えることはできない。
[C.C.]私の願いを叶えるには、この身に宿る呪いもまた別の誰かに移す必要がある。この世界のルールでは、元の世界のルールを変えることはできないからな。
[C.C.]と、なれば、私が望むことは、元の世界に戻り、ルルーシュに契約を履行してもらうこと……。
[C.C.]いや、本当に願いが叶うのであれば……、うん?
緩やかな風に吹かれて、C.C.の足元に何かが飛んでくる。拾い上げてみると、それは一枚のタロットカードだった。
[カーヴィ]それ、私のものです。
[C.C.]不吉なカードだな。
カードの絵柄を見つつ、C.C.はカードを追いかけたと思しき女性に手渡す。
[カーヴィ]あなたに拾われたのなら、「それ」が正にあなたの運命です。
[C.C.]ほう? お前は占い師か。なら、「それ」は、お前から見て、どういう解釈なんだ?
[カーヴィ]……「叶わぬ願い」、といったところでしょうか。
不吉な予言だけ残し、その場を立ち去る占い師。
[C.C.]「叶わぬ願い」か。そう言われるのは、聞き飽きているんだよ。占い師さん。
[七海礼奈]そういった流れの時は、そっちの牌を……。
[ルルーシュ]なるほど。そういう手があるわけか。
[七海礼奈]どうです?何か掴めそうですか?
[ルルーシュ]ああ。やはり実戦に勝る経験はないな。こうして君と打てたことで思考のパターンが広がったよ。
[ルルーシュ]ありがとう、礼奈。
[七海礼奈]い、いえ。そんな。これもさっきのお礼みたいなものですし……。これでルルーシュさんがトップを取って、早く妹さんに会えるのなら、何よりだと思います。
[七海礼奈]ふむぅ……妹さんの足も治ったらもっと良いんですけどね。
[ルルーシュ]……ああ。目は心因性のものだから、また見えるようになる可能性はあるけど、足は絶望的らしい。
[七海礼奈]……そうですか。すみません、ルルーシュさん。妹さんの事情をよくわかってなくて、れいな、勝手に自分と同じだと思っちゃって……
[ルルーシュ]気にしないでくれ。君と同じというと、礼奈の足は、治るかもしれないのか?
[七海礼奈]実は事故にあってすぐに、れいなの足は完治してるんです。大した怪我ではないはずなのに、何故か今も足に感覚がなくて、立てないんです……すみません、隠していたつもりはなかったのですが。
[ルルーシュ]事故のトラウマか……。心に負った傷は、身体の傷のように自然に治ったりはしない。
[ルルーシュ]それに、身体の傷と同じで治らないことだってある。だから、君が引け目を感じることはない。
[七海礼奈]私に勇気さえあれば、歩くことが出来るのに……。
[ルルーシュ]勇気が出ないことは誰にだってあるさ。俺にだってある。
[七海礼奈]ルルーシュさんにも?そんな風には見えないのに。
[ルルーシュ]あるさ。俺はね、親友や仲間に嘘を吐いているんだ。本当は言わなきゃいけないんだろうし、力になってくれるかもしれない。
[ルルーシュ]でも、俺が元いた環境では、その本当のことを言ってしまうと俺だけではなく妹にまで危害が及ぶ可能性があるんだ。それも命を脅かされるほどの危害がね。
[七海礼奈]妹さんにまで……。
[ルルーシュ]ああ。だから、俺は今でも嘘を吐き続けている。本当のことを言う勇気がないんだよ。
[七海礼奈]そんなこと……。あ、でも、もしそのお友だちもこっちに来ているなら本当のことを伝えられるかもしれませんね。
[ルルーシュ]えっ?
[七海礼奈]だって、ここはルルーシュさんが元いた環境ではありませんよ。本当のことをお伝えしても、もしかしたら……。
[ルルーシュ]……そうか。そうかもしれないな。ありがとう、礼奈。
[七海礼奈]はい。いつかは勇気を出さないといけませんよね。私もそう思うんです……。
[ルルーシュ]勇気……。本当のことを伝えられる勇気、か。
シナリオ エピローグ [七海礼奈]それじゃ、そろそろ店が忙しくなりそうな時間なので、先に帰りますね。残りの分はみんなで分けて食べてください。もし良かったら、ぜひ感想聞かせてくださいね。
[一姫]ケーキ美味しかったにゃー!礼奈ちゃん、ありがとにゃ。一姫が送って行くにゃ!
[ルルーシュ]色々教えてくれてありがとう。機会があれば、今度はカフェの方にコーヒーを飲みに行くよ。
[七海礼奈]ふふっ。お待ちしています。麻雀、頑張ってくださいね、ルルーシュさん。
[ルルーシュ]ああ。俺も勇気を出してみるよ。
[ルルーシュ]さあ、俺たちも始めるとするか。
[かぐや姫]ほう。さっきとは違って、えらくやる気があるようじゃの。何か心変わりでもあったのか?
[ルルーシュ]少しばかりな。さっきと同じだと思わない方がいい。
[かぐや姫]ぐひひ。なら、汝ら4人で打つが良い。わらわは、汝らがこの短期間で成長できたのか見届けてやろう。
[紅月カレン]えっ?かぐや姫は打たないの?
[ルルーシュ]まあ、それならそれで都合がいい。
[枢木スザク]うん?どういう意味だい?
[ルルーシュ]対局を始めればわかる。
[一姫]じゃあ、今度の対局は、ルルーシュ、スザク、カレン、C.C.の4人でいいかにゃ?
[ルルーシュ]ああ。
[枢木スザク]わかった。
[紅月カレン]うん。
[C.C.]問題ない。
[一姫]よ~し。では、対局スタートにゃ!
ルルーシュ、スザク、カレン、C.C.の4人が卓を囲んでの対局が始まる。
[枢木スザク]ルルーシュ。さっきの話だけど、僕たち4人で打つのが都合がいいとはどういう意味なんだ?
[紅月カレン]単純にかぐや姫が強いからじゃないの?それに、この4人なら誰が勝っても、元の世界に戻れるだろうし。
[C.C.]それはどうかな?
[紅月カレン]そうか。アンタがいたか……。
[ルルーシュ]いや、彼女……、C.C.は言っているだけだ。そいつの目的も元の世界に帰ることにある。
[枢木スザク]ルルーシュ、どうして君にそんなことがわかる。
[紅月カレン]ちょっと、スザク。アンタ変だよ。さっきからルルーシュに食ってかかり過ぎじゃない?どうしたっていうの?
[枢木スザク]変なのはルルーシュの方だ。友だちだからわかる。ルルーシュには何か考えがある。
[枢木スザク]そうだろう?
[ルルーシュ]……最初に言っておく。俺の願いは、俺たちの世界をナナリーが安心して暮らせる世界にすることだ。
[ルルーシュ]その願いが叶うのなら、俺は元の世界に帰れなくてもいい。
[C.C.]……
[紅月カレン]ちょ、ちょっと、何を言い出すの!それにルルーシュたちは、ブリタニア人でしょ?
[紅月カレン]今のブリタニアの支配下の世界なら、ナナリーだって。
[枢木スザク]それは違う。違うんだよ、カレン。だってルルーシュたちは……。
[紅月カレン]ルルーシュたちがなんだっていうの?
[ルルーシュ]それは、俺たちが皇族だからだ。
[紅月カレン]えっ?こ、皇族……?
[枢木スザク]ル、ルルーシュ!それは秘密に……。
[ルルーシュ]いいんだ、スザク。俺の本名は、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。神聖ブリタニア帝国の元第11皇子にして第17皇位継承者だ。
[ルルーシュ]当然、ナナリーも皇族の一人。ナナリーは、母マリアンヌの暗殺に巻き込まれて目と足の自由を失ったんだ……。
[ルルーシュ]しかし、父であるブリタニア皇帝は、そんなナナリーと俺を政治の道具として 極東の島国に送った。戦争が起きる一年前のことだ。
[紅月カレン]7年前の戦争よりも前?と、いうことは……。
[ルルーシュ]ああ。父であるはずの皇帝は、俺とナナリーのいる極東の島国に戦争を仕掛けたんだ。俺たちの生死なんて気にしてなかったんだよ。
[ルルーシュ]だから、俺たちは戦争で死んだことにし、アッシュフォード家の援助を受けて、学園に隠れ住んでいるんだ。
[紅月カレン]そ、そんな……。じゃあ、ルルーシュたちが生きていることがブリタニアにバレたら……。
[ルルーシュ]良くて政治の道具。悪ければ殺される。どちらにせよ、ナナリーに自由と安心はない。
[紅月カレン]スザクはそれを知ってて……。
[枢木スザク]ああ。7年前にルルーシュたちが預けられたのが僕の家だったんだ。
[紅月カレン]そうか。だから二人は昔からの知り合いで……、友だちで……。
[ルルーシュ]だから、俺の願いは、俺たちの世界をナナリーが安心して暮らせる世界にすることなんだ。そのためだったら何でもする。
[枢木スザク]何でもするって……。それはブリタニアに反抗することだ。
[ルルーシュ]そうだ。だから、俺は腹違いの兄さえ手にかけた。
[紅月カレン]腹違いの兄って……クロヴィス!?
[ルルーシュ]俺はブリタニアに戦争を仕掛けた。敵将としてクロヴィスを討ち取ったんだ。
[枢木スザク]クロヴィス殿下を?その物言い。ルルーシュ、君はもしかして……。
[ルルーシュ]そうだ。俺がゼロだ。
[紅月カレン]ルルーシュが……、ゼロ?
[ルルーシュ]俺は、クロヴィスを殺し、ゼロとなって黒の騎士団を作った。すべてはナナリーのため。
[枢木スザク]ナナリーのため?なら、どうして僕に言ってくれなかったんだ?
[ルルーシュ]言っただろう!仲間になってくれと。でも、お前は俺の手を振り払った。
[ルルーシュ]ブリタニアを価値のある国に中から変えると言って!
[枢木スザク]あ……、あの時の……。でも、あれはゼロの仮面をつけていたからで……。
[ルルーシュ]なら、素顔のルルーシュで言っていたら、この手を取ってくれたのか?過去の自分に囚われ、ルールを絶対に遵守するお前が。
[枢木スザク]それは……。
[紅月カレン]ルルーシュがゼロだというなら、その方法は理解できる。中から変えるのでは遅すぎる。その間に、力のない人は虐げられ、命を落としていく。
[枢木スザク]しかし、それは間違ったやり方だ。暴力で対抗すれば、憎しみが連鎖するだけ。
[紅月カレン]だったら、力のない人は死ねと言うの?加害者の勝手に決めたルールに則れって?
[枢木スザク]そうじゃない。ブリタニアにだってユフィのような人がいる。彼女の望みは、暴力ではなく、話し合いで解決できる優しい世界を目指すことだ。
[枢木スザク]僕の望みだってそうだ。だから、ユフィと協力すれば……。
[紅月カレン]そんなの、わかってる。私の望みは、ブリタニアの支配から脱却した自由な世界を目指すこと。
[紅月カレン]それは、暴力なんかに頼らず、話し合いで解決できる優しい世界のことよ!
スザク&カレン
[枢木スザク&紅月カレン]あ……。
[ルルーシュ]そうだ。みんな同じなんだ。望みはただ一つ。
[ルルーシュ]優しい世界を目指すこと……。
[紅月カレン]だから、ルルーシュは自分の事情を……。
[ルルーシュ]ああ。元の世界では、お前たちにこうやって告白することは出来なかった。誰が信用できて、誰が裏切るかわからなかったから。
[ルルーシュ]でも、この別の世界なら違う。俺はお前たちを信じたい。だから、すべてを打ち明けた。
[ルルーシュ]この対局でお互いの望みを知った。想いも知ることが出来た。後は、お前たちの判断に任せる。
[枢木スザク]ルルーシュ……。
[紅月カレン]私たちの判断、か。
[枢木スザク]そんなの決まっている。なあ、カレン。
[紅月カレン]ええ。スザク。
[C.C.]どうやら、勝負ありのようだな。
[かぐや姫]で、どうして汝らはまだここにおるんじゃ?
[紅月カレン]それが、あの対局はルルーシュが勝ったのに、私たちは元の世界に戻れなくて……。
[ワン次郎]おかしいワン。魂天神社の願いは万能だワン。異世界から来た人間の願いが誰か一人でも叶った場合、自動的に元の世界に戻るための扉が開くはずワン。
[かぐや姫]ぐひひ。どうしてじゃろうのう。
[ルルーシュ]どうしてもへったくれもないだろう。お前が原因のくせに。
[枢木スザク]かぐや姫が原因?どういうことだい、ルルーシュ。
[ルルーシュ]簡単なことだ。俺たちがこの世界に来て、最初の対局を思い出してくれ。誰が勝った?
[紅月カレン]それは当然、かぐや姫だけど……。
[ルルーシュ]その後の対局で、ある意味において俺の願いは叶った。なら、ワン次郎が言うように元の世界への扉が開くはずだ。
[C.C.]それがここのルールだものな。
[ルルーシュ]そうだ。ルールは絶対的なもの。なら、なぜ扉が開かなかったか。それは、かぐや姫がそう願ったからだ。
[枢木スザク]そう願った?つまり、僕たちが元の世界に帰らないように願ったってこと?
[ルルーシュ]ああ。ルールが絶対であるならば、それ以外は考えられない。そうだろう?かぐや姫。
[かぐや姫]ぐひひ。バレてしもうたのう。
[紅月カレン]バレたって……、本当にそんなことを願ったの?
[かぐや姫]ああ。それぞれに何かを隠している汝らが面白そうだったのでな。興味が湧いたのじゃ。
[一姫]このバカウサギ!なんてことを……。
[かぐや姫]うるさいぞ、ちんちくりん。わらわが願ったのは、あくまで「しばらくこの一飜市に留まること」だ。
[かぐや姫]その「しばらく」が終われば、ルルーシュの願いが履行され、元の世界への扉が開くじゃろう。それまでは、せいぜいここでの時間を楽しむが良い。
[かぐや姫]さてと、そろそろ時間じゃな、わらわは帰るのじゃ。
[一姫]あ!待つにゃ、このバカウサギ!
[紅月カレン]あ~あ。行っちゃった。
[枢木スザク]でも、おかげで考える時間があるのはありがたい。僕たちは僕たちのこれからのことを考えよう。
[紅月カレン]そうね。ルルーシュが告白してくれたこと。そのおかげで、私たちはみんな、優しい世界を願っていることを知った。
[枢木スザク]だから、話し合えば、きっと優しい世界を実現できる方法が見つかるはずだ。
[ルルーシュ]スザク……、カレン……。
[C.C.]話し合いを始めるならまずは腹ごしらえだな。どれ、ピザでも頼もうじゃないか。
[ルルーシュ]ピザって……。お前はこの世界のピザが食べたいだけだろう。
[C.C.]なら、お前だけ腹を空かせていればいい。
[ルルーシュ]わかった。わかったよ。でも、ピザを買う金はどうするんだ?この世界の通貨を持っているのか?
[C.C.]ぬかりない。一姫たちから借りた。
[ルルーシュ]はあ……、お前ってヤツは……。それにしても、お前はこうなることが最初からわかっていたのか?
[C.C.]うん?
[ルルーシュ]わかっていて、あの時、麻雀を打とうと誘ったのか?
[C.C.]いいや。私は私の願いを叶えたかっただけだ。
[ルルーシュ]ほう。お前の願いか。そろそろ願いの内容を教えてくれる気になったのか?
[C.C.]……どうだかな。まずは元の世界に戻ってからだ。そうしたら、教える気になるかもしれん。
[ルルーシュ]……ふふっ。掴めない奴だ。
[C.C.]そうさ。私はC.C.だからな。ふふっ。