約束の間奏曲 物語を読む
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竹雲の祭典 | 約束の間奏曲 物語を読む | 約束の間奏曲 物語を読む |
[-] 南楓花の「臨時秘書」として、周年祭を無事に開催出来るように仕事を進めていく他に、もう一つこなさなければならない業務がある。それは、「上司にあたる南楓花社長への、定期的な仕事の進捗報告」だ。 [-] 私は、紆余曲折ありながらも、運よく紙一重の所で無事に終えられた直近の二件の仕事を詳細に思い返してから、「竹雲」最上階のあの扉を慎重にノックした。 [???] どうぞ。 [-] 室内は上品で豪華な内装で彩られ、吊るされた二つの八角形の瑠璃灯籠は、古風な雰囲気をぼんやりと映し出していた。真正面にあるオフィステーブルに、南楓花が座っている。背後の開け放たれた窓からは遥か遠くの「無双街」の街並みが一望出来るようになっていて、部屋の中にまでゆったりと差し込んでいる日差しが、彼女の輪郭を柔らかくぼかしていた。 [南楓花] ちょうどつい先程、梅になぜ貴方がまだ来ないのか、もしかすると、彼女に引き止められているのでは、などと問うていた所でしてよ……ふふ、噂をすれば影ですわね。 [-] 南楓花はスマホを無造作にテーブルの隅へと放り、こめかみに手を添えて私に尋ねた。 [南楓花] 首尾はいかがですの? [player] 神様をお招きする儀式は済みました。これで周年祭当日の「神巡りの儀式」もつつがなく行えるかと。オークションの方ですが…… [-] 私は顔を上げ、当事者の一人である南社長の顔を見た。彼女の表情はいつも通りで、もう怒ってはいないようだったので、思い切って話を続けることにした。 [player] あの日ご覧になった通り、「聖祷の心(ハート・オブ・ディバイニティー)」はもう取り戻しましたし、梅さんもオークションの警備員を増員してくれましたので、もう問題はないはずです…… [南楓花] はぁ…… [-] 南社長は手にしていた扇子をにわかに閉じると、深いため息をついた。 [player] な、何か……!? [南楓花] やはり、あたくしの秘書はあたくし自ら指導しないといけないようね。あなた、梅から悪い影響を受けましたわね。ただ真面目一辺倒に報告されても、つまらないことこの上なくてよ。 [南楓花] 何か面白いことをお話しくださらない? 例えば、この仕事の最中にあった楽しいことですとか。 [player] 楽しいこと、ですか? うーん……一緒に仕事してる人はみんないい人達ですし、彼らと一緒に何かしている時は楽しいと思います。……これは、社長の言う「楽しいこと」に含まれますか? [南楓花] ふふ、もちろん含まれてよ。人付き合いが存外お上手でいらっしゃるのね。実は、あなたがおいでになる前に、ちょうど梅と苑から仕事の報告を受けていたのですけれど、あの子達、口を揃えてあなたを絶賛していたんですのよ。 [player] はは、人付き合いですか……上司や部下と心を通わせるのも、大事な仕事の一つですから。 [南楓花] へぇ? そう…… [-] 南社長は軽く笑ってから手を伸ばし、私の胸元を扇子で軽く突いた…… [南楓花] 上司や部下と心を通わせることが大事な仕事と仰るなら……あたくしたちも上司と部下の関係……違って? |