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ことの始まりは、旅から帰ってきてすぐの夏の週末……のそのまた三日前

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ことの始まりは、旅から帰ってきてすぐの夏の週末……のそのまた三日前。
[player]……撫子さんの誕生日パーティー!?
窓の外で騒がしく鳴いているセミよりも大きな声が思わず口から飛び出し、ソファの上でだらけていた私はウキウキして立ち上がった。
[撫子]誕生日というか、それを口実に、久しぶりにダチと会いたいだけさ。週末の予定あけといてよ。
[player]もちろん! 行かせてもらうよ!
ビデオ通話画面の中、興奮している私とクールな表情を崩さない撫子さんが鮮明な対比をなしている。でも、今の私ならはっきりわかる。彼女の表情に、かすかに嬉しさが滲んでいるのを。
[撫子]OK、当日迎えに行くから。じゃ。
[player]あ、ちょっ……。
ピロン♪
通話終了、通話時間:00:01:02。
[player]……パーティー会場の場所、教えて……。
だいぶ表情から気持ちを読み取れるようにはなったけど、このかなり情報がそぎ落とされているコミュニケーションにはまだ慣れが必要だ。撫子さんとのチャットから履歴を確認しようとしたら、チャット欄の一番上に見たことのないグループトークが現れた。
[-](未読)彼女らしいといえばそうだけど、たま~~にでいいからこっちのことも考えて欲しいわよね~。
[player]そうだそうだ。って、これはいったい……?
私の心を呼んだのかのようなメッセージが、そのグループトークから送られて来た。撫子さんのアイコンをタップしようとしていた指が、そのメッセージに引き寄せられてトークを開く。
[寺崎千穗理]何年か前、誕プレとして、彼女がいつも読んでる雑誌に似せた記念写真集を作ってあげたことがあるんだけど、渡したら速攻でバレたわよ。いつもと厚みが違うからって。
[藤田佳奈]そんな所もさすが先輩、ですね!
[寺崎千穗理]……。
[藤田佳奈]あっ……。
[如月彩音]それはね……。
[player]……?
[如月彩音]PLAYERさんを仲間に呼んだのは、君にプランを考えて欲しいなと思って。
[player]私が!? なんで??
[藤田佳奈]なんかね、ファンさんなら誰も思いつかなそうなプランを考えられるんじゃないかーって話になって。それに、佳奈ちゃんみたいに運もいいし?
[寺崎千穗理]そうよ、私達も何にもしない訳じゃないし。
通知のバイブレーションが止まらず、彼女たちのメッセージで私のささやかな抵抗も虚しく流されていく。
[player]わかった。私なりに考えてみる。じゃあ、何か思いつくまで、一旦落ちるね。
[藤田佳奈]フレーフレー、頑張れファンさんー!
彼女たちの声援に見送られながら私はチャットを閉じ、プランを考え始めた。
パーティーでサプライズをしたいなら、まずはそのパーティーの場所を突き止めないことには始まらない。でも撫子さんのことだ、直接聞きにいくと多分バレる。彼女たちみたいに。
ここは堅実に、迂回ルートで行こう。
さて、考えられる迂回ルートは三つある。どこから攻めようか。