周囲の人が言う「立入禁止区域」こそ、主人公たちが探している目的地……ロードムービーでよくある展開だ。それに、今諦めるなんてもったいない。
[player]もう少し、先へ進みたいな。撫子さんは?
[撫子]あたしもだ。危険って聞いて怖気づくのも性に合わないし、この道ならまだあたしのテクでなんとか出来る範囲だから、とりあえず進めるだけ進もう。
そう言って、私達は再び前へ走りだした。
撫子さんの言った通り、その先の道路は、彼女の運転技術のおかげで、平地同然とは言わないまでも無事に進むことが出来た。しかし、空が暗くなるまで進んでも、私たちが探しているような景色には出会えなかった。と同時に、周りの景色がより一層物寂しくなってきた。
[player]いや、というか、夏なのに日が暮れるの早すぎない……?
腕時計によれば、日没までまだ時間があるはずなのに。
[撫子]まさか……。
ゴロゴロと、大きな音が空に鳴り響く。頭を上げるとさっきまで晴れた夏の空は雨雲に覆われていた。
[player]いやいや急すぎないかー!?
[撫子]ゲリラ豪雨が来るぞ。しっかり捕まって!
撫子さんはスピードを上げた。振動と突風で、私は撫子さんにしがみつくしかなかったが、サイドミラーに映った空をちらりと見た。
頭上の空は今真っ二つに分かれている。前方は鮮やかな夏の晴れた空、後方は雷鳴轟く真っ黒な雲。もくもくと沸き立つ雲から降り注ぐ雨のカーテンは私たちの来た道を埋め、不幸にもにその境界線はどんどん私達に迫ってきている。
スリリングな光景に私は言葉を失った。
しかし撫子さんは動じる様子もなくスピードを上げた。私の表情をサイドミラー越しに見たのだろうか、風と雷とエンジンの轟音が鳴り響く中、彼女のよく通る声が私の耳に入ってくる。
[撫子]よくあるこった。自然とのレースだと思えば気楽で面白いよ!
[player]気楽って、そんな余裕どこから来るの!?
そこまで言うってことは、勝てるってことだよな。
[撫子]ははっ、絶対に勝てないレースだから気楽に参加出来るってことさ!
[player]それってどういうーー。
次の瞬間、私たちはずぶ濡れになった。
なるほど、さすがの撫子さんも自然には勝てないってことだ。気楽に参加出来るレース……そういう前向きな考え方も彼女らしいというべきか。
[player]いや、もうわかったわ。
[撫子]でも今日はあんたがいるし、いつもよりもっと負けず嫌いで行ってやろう!
撫子さんはさらにスピードを上げ、雨のカーテンを突き破った。
カーブの続くオフロードをバイクが黒い稲妻のように駆け、猛追する豪雨の前線はバイクを今にも飲み込もうと追いかけている。こんなシーン、真上から撮ったら絶対かっこいいよなってつい思ってしまった。
[player]はぁ……はぁ……。
振り落とされないように撫子さんの体とバイクにしっかり捕まり、アドレナリンのせいで心拍数はずっと高いまま。撫子さんの体もいつもより緊張で強張っている、今全力を出して逃げているってことだ。
もちろん、雨雲の追跡は止まる気配がまったくない。なんなら私の背後に幾度となく冷たい雨水の気配がした。
[player]ん?
[player]撫子さん、あれ……民宿かな?
[撫子]ああ、なかなかいい感じだな。
[player]こういう大自然に突然出てくる民宿も、ツーリングあるある?
[撫子]そんなわけあるか。でもあそこに行けばとりあえず雨には勝てそうだね。入ってみるかい?
私の答えは……
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