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将来、コーヒー屋さんでも開いてみたら?

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唯の瞳に、少しだけ暗い影が差した気がした。
よく注意して見ないとわからないほどの、ほんの少しの違いだけど。
[player] ……どうしたの?
[八木唯] ……私が淹れると、なぜか美味しくならない。
どうしてだろう。コーヒーに関してだけは、唯の味覚は確かなはずなのに。
[player] いつも、どうやってコーヒー淹れてる? 手順を一個ずつ確認してみようよ。
[八木唯] ええと……、まずはコーヒー豆を厳選。
[player] うんうん。
[八木唯] グラム単位で分量を量って、豆に熱が伝わらない最適な速度でミルを回して……
[player] うん、いいんじゃない?
[八木唯] 香ばしさをプラスしたいから、魚粉をちょっと入れる。
[player] うんうん。
[player] ん!?
[八木唯] カツオの割合が一番大きいけど、トビウオとかイワシもしっかりブレンドする。//nその方が、何となく味に深みが出そうだから。
[八木唯] 隠し味は、未来から貰った新開発の調味料。//n原料はよくわからないけど、とりあえず大さじ2杯くらい……
[player] ちょっ、ちょっと待った!
[player] アレンジが過激派すぎる……!
[player] 途中でやめてれば完璧だったのに……!
[八木唯] なるほど、「引き算」……!
[八木唯] その発想はなかった。ありがとう、先輩。
[player] とりあえず、喜んでくれたなら何より……なのか?
川沿いの散歩道
[-] 「エテルニテ」を出ると、二人で散歩を再開した。//nカフェから歩いて十分ほど経つと、川沿いにある散歩道に到着した。
吹き抜ける風が気持ちよくて、//n風邪のことなんて忘れて、いつまででも歩いていられる気がした。
[八木唯] ……先輩、顔色よくなってきた。
[player] ほんと? ……確かに、身体軽くなってきたかも。
[八木唯] コーヒーの効果、だね。
唯が一瞬だけ笑ったように見えたけど、光の加減でよくわからなかった。//n宝石みたいな川面の輝きはとても綺麗だけど、肝心なところを覆い隠してしまう。
[八木唯] ……私、たまに想像する。
[八木唯] もしも、お父さんとお母さんがまだ生きていたらって。
唯は欄干にもたれかかり、眩しそうに川面を見つめた。
[八木唯] もう大学生だから、三人で手を繋いで帰ったりはしないと思う。//n会う頻度もどんどん減っていくはず。
[八木唯] だけど、お父さんとお母さんはいくつになっても仲良しで、//nこんな川沿いを楽しそうに話しながら散歩してる。
[八木唯] 家に帰ったらコーヒーを淹れて、今日起きたことを一つずつ振り返ったりする。
[八木唯] 私は、二人の話を聞いているだけでいい。
[八木唯] ……それだけで、すごく楽しいんだと思う。
[八木唯] ……先輩。
唯はこちらを振り向いた。
[八木唯] 私、本当は寂しかったのかな?
[八木唯] 二人が亡くなったこと、もう乗り越えたと思ってたけど……
[八木唯] 昔のことを思い出したら、何ていうか……。//nこれじゃ駄目なのはわかってるのに……
[player] 駄目なんかじゃないと思うよ。
[八木唯] え?
[player] 急いで乗り越える必要なんてない。//nたまには立ち止まって、ゆっくり二人のことを思い出したらいいんだ。
[player] ……って、私が軽々しく言える話じゃないかもしれないけど。
[八木唯] ……ううん。ありがとう。
唯の隣に歩き、欄干に身体を預ける。
そろそろ太陽が傾き始めていた。夕陽を浴びた水面が、輝きをさらに強めている。
[八木唯] ……お父さんとお母さん、「パラレルワールド」について研究してた。
[player] パラレルワールド……? 何それ。
[八木唯] ……よくわからない。あんまり教えてくれなかったから。
[player] 私たちのいる世界と違う世界とか、そういう感じ……?
[八木唯] 私も、そう解釈してる。言葉の意味から想像するしかないけど……
[player] なんかSFみたい。本当にそんなのあるのかな?
[八木唯] わからない。
[八木唯] ……先輩。もし別の世界があったら、行ってみたいと思う?