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断る

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私はこの二日間の玖辻とのわずかなやり取りを振り返った。具体的な取引内容が分からないのに、軽々しく取引に応じるのは賢明ではない。 私の疑念を察した玖辻は身を乗り出し、眉を軽く釣り上げて嘲るような笑みを浮かべた。 [玖辻]どうやらまだ不安なようだな。違法行為はさせない、保証するよ。 [玖辻]ただアンタの度胸を確かめたかっただけなんだがな、どうやらアンタの「Soul」を助けたいという決意はその程度のモンだったようだな。 [玖辻]チッ。最近、部下どもの情報がどんどん不正確になってきてんだよな。アンタを買いかぶってたよ。 [player]けしかけてるんですか? 間違いなくそうだろう。だが人間とは奇妙な生き物で、分かっていても話に乗ることを選んでしまうことがままある。 ここで弱みを見せれば、この後の主導権を握るのがより難しくなるのは明白だったし。 私は彼の肩に手を伸ばして、いつの間にか着いていた埃を払ってやり、まっすぐに彼を見返した。彼の目の奥に過ぎったわずかな驚きさえも見てとれる距離だった。 [player]だったら……リーダーさんには、その「違法じゃない行為」が具体的に何を指すのか、詳しく話してもらいましょうか? 玖辻は私の質問にすぐには答えず、指でテーブルを叩いた。すると私のすぐ後ろから人がやって来た。まさに昨日ドアを開けてくれた少女だった。彼女は私に、いかにも価値が高そうな一枚のブラックカードを手渡した。 [玖辻]先に任務の経費を渡しとくぜ。 [player]経費? [玖辻]明日、「幾度春」で月に一度の切り花の競りがある。表向きは切り花を売ってるが、その実、切り花が象徴する芸妓と一緒にお茶を楽しむ権利を売ってんだよ。 [玖辻]彼女達のほとんどは、いくら金を積んでも会うことが叶わない存在だ。んで、たま~にあの東城玄音も参加する。アンタにはオークションで彼女の切り花を競り落とし、会う機会を掴みとってもらう。 [player]どの花に入札するんですか? [玖辻]さぁな。 [player]は? [玖辻]この催しは今までずっとトレーディンググッズのブラインド形式みてーなやり口しててよ、それぞれを示す花はその時の芸妓本人の気分で選ばれてて、固定されたこともねぇのよ。だから、なんつーか……ガンバレ~。 トレーディンググッズ……やはりブラインド形式は業界を問わず横行する悪い文明! 消費者諸君は団結して抗議すべきだ。 [player]それではあまりにも運任せすぎませんか? あなた方の情報網で事前に知れたりしないんですか? [玖辻]他の奴ならまだ打つ手はあるが、東城玄音は無理だ。彼女だけが自分の選ぶ花を知ってて、最も近しい付き人にも言わねぇんだと。 [玖辻]今のところ俺達に辿り着けたのは、彼女が明日のオークションに参加するという情報だけだ。 [player]でも噂では、あなた方に調べられない情報はないと言われていますよ? [玖辻]それも間違いじゃねぇさ。ほら、これからアンタがやろうとしてる任務は正にこの情報を獲って来ることになんだろ? [player]……なるほど。じゃあ、私がやるのは競りに参加して東城玄音を示す切り花を競り落とす……ですね? [玖辻]正確には、競りで東城玄音を示す切り花を落札し、買い手として彼女に会うことだ。 [玖辻]それから、戻った後、自分が見聞きしたものを一言一句漏らさず俺に報告すること。 [player]でもあの、聞きたいことが……