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元のプランを進める

jyanshi: 
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三人は言っていた、撫子さんは本当はサプライズに憧れているのだと。その憧れのために、私は……。 [player]やはり、プランの変更はなしで。撫子さんが予約したミールキットはキャンプの厨房に任せよう。料理が無くても、私たちが準備した軽食やおやつもあるし、食べ物の心配は必要ないと思う。それよりも、撫子さんにサプライズを送ることの方が大事だ。みんなもそう思うでしょ? [三人]了解! みんなの同意を得たところで、私は撫子さんにバレる前にスマホをポケットに戻した。 それから一時間後、撫子さんと一飜市の郊外にあるキャンプ場に到着した。キャンプ場の主人は計画通り、入り口の方で申し訳なさそうに例のセリフを言った。 [撫子]臨時メンテナンス……? [キャンプ場のオーナー]ええ……。水道設備が急に故障して、工事のためにあのエリアは終日使用不可になりまして。急すぎて連絡が間に合わず、申し訳ない。こちらとしても、こんなことで残念な思いをさせるのは不本意です。なので、お客さんさえ良ければ、山腹の方のキャンプ場を無料でお使いいただくのはいかがでしょうか。あっちはまた別の良い景色が見られますし、設備もワンランク上ですよ。 [撫子]確かそっちは火気厳禁でしたよね。 [キャンプ場のオーナー]そうなんです。ですが、お持ちのミールキットはこちらの厨房で調理の上提供することも出来ますし、山腹キャンプ場の高級テントには、ゲーム機や雀卓といった遊べるものも揃ってます。本日はきっと、ご友人たちと素敵な時間を過ごせると思いますよ。 [撫子]そうなんですね……。 撫子さんが躊躇している間、私はこっそりとオーナーさんに親指を立てた。 [撫子]あんたはどう思う? いきなり話しかけられ、私は慌てて指を引っ込めた。 [player]そうだなあ……。今の時間だと他のみんなももう向かってると思うし、全員に引き返させるのは現実的じゃないよ。やりたかったことが出来なくて残念だけど、次また来た時に一緒に出来ると考えれば、そんなに悪いことでもないんじゃないかな。 [撫子]そうか……。ならいいけど。 [キャンプ場のオーナー]ご理解いただきありがとうございます! ささ、山腹キャンプはこちらです。 山道に沿って登っていくと、自然が一層深まっていく。木漏れ日が天然のドームとなり、ここと下界とを隔てている。その中を通り過ぎて、私たちは山腹のキャンプ場に着いた。 [キャンプ場のオーナー]到着です。あらためて本日は申し訳ありませんでした。では、ごゆっくりどうぞ。 [撫子]ありがとうございます。 撫子さんはなにも考えずキャンプ場内に入って行き、次の瞬間…… パーン! キャンプ場に先回りしていた挑戦者の三人が、クラッカーで撫子さんを出迎えた。金色のキラキラが舞い踊り、撫子さんは驚きのあまり硬直している。 [如月彩音]誕生日おめでと~♡ [寺崎千穗理]おめでとう。 [藤田佳奈]お誕生日、おめでとうございまーす! [撫子]こ、これは? あんたたちいったい……? 私たちは目撃した、世にも珍しい感情を露わにした撫子さんを。 [藤田佳奈]先輩、驚きすぎー! 言葉になってませんよ? これって、今年は私達の勝利ってことでいいんですね? 先輩のこの顔、写真に撮りたいなぁ〜! カメラカメラ……あれ、カメラどこ? カシャカシャ。如月先生はいつの間にか佳奈ちゃんのカメラを手に持っていて、この決定的瞬間を収めていた。 [藤田佳奈]あれ、なんで先生が佳奈ちゃんのカメラを持ってるの! [如月彩音]藤田さん、さっき自分でテーブルの上に置いてたよ~。 [藤田佳奈]そんなわけ……! [如月彩音]ホントだも~ん! [藤田佳奈]本当にぃ~……? 寺崎せんぱーい! [寺崎千穗理]私は何も見ていないし知らない。聞くだけ無駄よ。 はしゃぐ三人を見て、撫子さんはやっと我に返り、私の方を向いた。 [撫子]さてはあんたの仕業だな。 [player]誕生日おめでとう。サプライズ、喜んでくれた? [撫子]フフッ、ありがとう。まさかキャンプ場のオーナーにまで協力させるとは、大したサプライズだ。あんたたちを見くびってたよ。気に入った! [player]楽しみにしてたテント張りが出来なくて落ち込むんじゃないかと思ってたから、気に入ってもらえてすごく嬉しいよ。 [撫子]残念じゃないと言ったら嘘になるけど、あんたたち見てたらどうでも良くなった。まぁ、あとでちゃんと、いつからこんなこと企んでたのを白状してもらうけどね。それじゃ、パーティーの始まりだ! 快適すぎるキャンプ場で、キャンプ感ゼロの誕生日パーティーが始まった。来年は、サプライズも、撫子さんのやりたいことも一緒に実現出来るといいな。