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積極的に手伝う

雀士: 
categoryStory: 

まずは撫子さんに手伝えることが無いか聞いてみるか。
[player]撫子さん、私に何か出来ることはない?
[撫子]いや、ちょっと待っててくれればいいよ。
撫子さんは振り返らず答えた。
[player]何でもいいから手伝わせてよ。基本の修理なら私だって出来ると思うし。
しばらくして、撫子さんは言った。
[撫子]……あんたにしか出来ないこと、確かにあるね……。
[player]任せて!
私がリアボックスから取り出した折り畳み式の踏み台に座ると、撫子さんは満足気に私の肩を叩いた。
[撫子]ここに座って、作業が完了するまで待っててくれ。あんたにしか出来ない仕事だ。
[player]……え? これ、何もしてなくない……?
さすがの私もこれは抗議せざるを得ない。撫子さんは修理に戻り、背中を見せながら私に答えた。
[撫子]大事な仕事だぞ。修理って、一人でやるのと誰かに応援してもらいながらやるのとで結構違うからさ。
[player]ふーん。そんな出任せが通用すると?
[撫子]親父が言ってたんだけど、誰かに見られながらやると修理の神様がご加護を与えてくれて、よりいい仕上がりになるんだってさ。……あ、今適当に言ってるなって思ったでしょ。
[player]絶対適当でしょ。
[撫子]あたしも小さい頃は信じてなかったけど、親父はあたしがいる時いつも、あたしに修理してるバイクを見させてたんだ。そうして何度もやってるとさ……
[player]やってると……?
まさか本当の話だったとは……。
[撫子]やっぱ適当だって分かったよ。あたしが見るか見ないか、いるかいないかなんて関係なく、親父はいつも同じように仕上げられた。
しかし、市街地から出てすぐ、道標のない分かれ道で撫子さんはバイクを止めた。
本当の話じゃなかったんかーい!
[撫子]……ハハ。
私の表情の変化を横目で見て、撫子さんは笑い出した。
[撫子]でもそんな可愛いあんたを見てると、親父が適当に誤魔化してた理由がわかった気がするよ。
何をわかったんだ……実質的には何も出来なかったけど、修理中ずっと撫子さんが楽しそうだったからいいか。
撫子さんの修理が終わり、バイクが元気に復活した。
[ライダー]本当にありがとうございます……! 僕こう見えてズブの素人でして、お二人に会えなかったら今日は押して帰る羽目になるところでした……!
[撫子]バイク乗りはお互い助け合うものさ、気にすんな。
[ライダー]なんとお優しい……これ、僕の連絡先です。今後何かあったら、微力ながらお助けしますのでぜひお呼びください。
[撫子]それなんだけどさ……
[ライダー]?
撫子さんは私たちが探している目的地についてライダーくんに尋ねた。しかし、彼は頭を掻いて、いかにも知らないといった表情を見せた。
[ライダー]申し訳ない。このあたりは初めてで、チャレンジし甲斐のあるロードだと聞いて来ただけなんです……。
[撫子]そっか。
[ライダー]お力になれずすみません……。
[撫子]いいさ。もう少し先の方へ行って探してみるよ。
[ライダー]え、この先ですか?
[撫子]そうだけど……。
そういうつもりではないと思うが、撫子さんが真面目な顔をすると、元から凛々しい顔立ちが更に鋭くなる気がする。
[ライダー]い、いえ。この先はもっと走りにくくて、事故も多発してるって聞いたので……。
[撫子]そうか、ありがとう。
ライダーは私達に別れを告げて、来た道を戻って行った。
撫子さんは私の方を向いて、この先に行くかどうかを目で問いかけてきた。
目的地の手がかりはないし、この先はより危険になるらしい。この状況、私の選択は……。