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これ以上食べさせてはいけない!

jyanshi: 
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これ以上無尽蔵に食べ続けていけば、さすがに一姫も体を壊してしまう。 [player]だーめ。これ以上は食べちゃいけないよ。もう二食分も食べたでしょ? [一姬]にゃー!?そんなはずないにゃ!さてはご主人、一姫のこと騙そうとしてるにゃ! [player]この洗ってない食器の山を見てごらんよ!全部一姫がひとりで食べたんだよ! [一姬]そんな記憶全然ないにゃ! 私の服を掴み、「本当に食べてないにゃ!」と涙を溜めながら言い張る一姫はか弱く見えるけど、実際はめちゃくちゃ暴食した後だということは忘れないぞ。 しかしこれは確かに噓をついている顔じゃない。こんな初めての事態はさすがに一人じゃどうしようもないと思って、私はワン次郎に助けを求めた。 ヘルプを送って数分後、あのでっぷりとした体が、はぁはぁと息を切らせながら汗まみれで部屋に入ってきた。 ワン次郎 [ワン次郎]はぁ、はぁ……。い、一姫は、どうした? [player]一姫は晩ごはんまだ食べてないにゃー!って言うけど、私たち、一姫が目の前で何食も食べたのを見たよね……。でも噓を付いてるようにも見えないし、体を壊したのかな……。 [ワン次郎]ははぁ、なるほど……こいつは参ったな。あの女のところに行くまでは何ともなかったのによ。やはりあの女の料理を食べて変になっちまったのか? 正直私もワン次郎と同じ発想はした。なにせあの二階堂さんの料理だ。食べたら何が起こってもおかしくない。 [一姬]ふにゃあ~……。 二人であーだこーだと言っているうちに、一姫は大あくびをしてテーブルの上で寝てしまった。食べ過ぎて頭が回らなくなったか……。 [player]他に異変もないし、しばらく寝かせて、明日また様子を見ようか。 ワン次郎はよだれを垂らしながら熟睡している一姫を見て頷いた。 翌朝 翌朝、目覚まし時計の代わりにワン次郎の鬼電で目が覚めた。慌てて一姫の部屋に行ったら、そこにはお茶をいれている一姫と死んだ目のワン次郎がいた。 一姫は……元気そうで何よりだ。昨日のあれ、もう大丈夫なのかな。 [一姬]ご主人、おはようにゃ!お茶淹れてあげるにゃ! 晩ごはんにゃ!とも言ってこないし、さすがにもう治ったか? 一姫が渡してくれたお茶を手に取り、ふーふーしながら飲み干して湯呑を置いたら、一姫がまた湯呑にお茶を淹れ始めた。 [一姬]ご主人、おはようにゃ!お茶淹れてあげるにゃ! そう言って、一姫はもう一杯お茶を淹れてくれた。//n私は呆然と新しいお茶を受け取り、飲み干して湯呑を返した。 [player]これはいったい……。 [一姬]ご主人、おはようにゃ!お茶淹れてあげるにゃ! そして案の定、話を聞こうとする前に次のお茶を目の前に差し出してきた。 [ワン次郎]これを飲め。俺はもう一時間は飲み続けてて限界だ。 [一姬]ご主人、一姫のお茶、飲んでくれないのにゃ? なかなか湯呑を受け取らない私を見て、一姫は静かな声でそう言った。さすがに怖かったので、私もさっと湯呑を取って一気に飲み干した。 [player]ワン次郎、このままじゃさすがにヤバい。何とかして一姫に異変を気付かせないと。 [ワン次郎]この小一時間誰よりも俺が一番そうしたかったわい。 [一姬]ご主人、おはようにゃ!お茶淹れてあげるにゃ! ワン次郎と解決策を相談している横で、一姫は私に次から次へとお茶を淹れてくる。あっという間にポット一つ分のお湯がなくなり、私は慌ててお湯を沸かそうとする一姫を止めた。 [player]一姫、自分の記憶喪失に何にも気付かなかったのか? [一姬]きおく、そうしつ……にゃ? [player]例えば……今私は一姫が淹れてくれたお茶を飲み干した。でもあと数秒もしたら、一姫は今したことを忘れてもう一回私にお茶を淹れてくれようとする。 [一姬]にゃにゃ?お茶を飲んだにゃ?全然気付かなかったにゃ。 [player]一姫が私がお茶を飲んだことを忘れたからだよ。 [一姬]そうなのにゃ……?あんまりわからないけど、わかったにゃ。 やっと自分の異変を自覚させることができたみたいだ。とりあえずお茶のループから抜け出せたと思い、ワン次郎の方を振り向いて親指を立てたら、ワン次郎の死んだ魚みたいな目の先に、一姫がお茶を淹れ始めた姿が見えた。 [一姬]ご主人、おはようにゃ!お茶淹れてあげるにゃ! ……。//nどれだけお茶淹れる気!?お前は金魚か!?//nこのままじゃこっちがお茶に溺れる金魚になる!いや金魚なら溺れないか。違う、はやく何とかしなきゃ!