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か弱く無力、しかしよく食べる

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……一姫は基本的に能天気で、それから胃袋がブラックホールと繋がっている。 しかし、そんな彼女でも、ワン次郎のサボりやかぐや姫の妨害を防ぎつつ、きっちりと魂天神社を切り盛りしている。 [player]一姫ですか。魂天神社の巫女としてよくやっていると思いますが……ちょっと大食いなとこがあるというか。 そう言うと、屏風の向こうから鈴のようなよく通る笑い声が聞こえてきた。相手は気をよくしたようだ。 [東城玄音]聞いてた通り、旦那さんは巫女さんと仲良しなんどすなぁ。 [東城玄音]確かに今の巫女さんはそんな風に見えはるんどっしゃろうけど、うちの曖昧な記憶やと、ある年に参加した時は確か……もっと冷たかった気がするんどす。 [player]ええっ? 冷たい一姫か……どんな感じなのか、少し気になります。 [東城玄音]ふふ、旦那さんと巫女さんの仲なら、いずれわかると思いますえ。 [東城玄音]旦那さんが巫女さんの知らない一面を見た時、麻雀大会が始まる時もわかるはずどす。 その一姫がどんな一姫なのか、上手く想像出来ない。もしかして、大会が始まると真面目になるとか? 眼鏡をかけた一姫が教鞭を手に雀卓の間を行き来しながら、麻雀を打つ皆にスパルタ指導をする光景を想像してみたが、なんだか微妙にリアリティに欠けるなぁ。 [東城玄音]でもこれは、本当かどうか保証しかねる事どすさかい、ちょっとした小話と思っとくれやす。 [player]どういうことですか? [東城玄音]うちだけやなくて、大会に参加した皆さん揃って、あの時の詳しい状況をほとんど覚えてへんようなんどす。うちもずっと、ぼんやりとした印象しかおへん。 [東城玄音]もう十年ほど経ちますけど、あれは果たして本当に起きたことなのか、うちの勘違いやったのか、時々疑わしくなるんどす。 東城さんはそう言ったきり、記憶の中へと没入するかのように黙り込んでしまった。しばらくして、彼女はゆっくりと口を開き、私にある質問を投げかけた。 [東城玄音]もしどなたかの性格が急に変わって、別人のようになってしもたら、旦那さんはどう思わはりますか?