ちょっと屋外に出て、新鮮な空気でも吸いましょう。
簡単に昼食を済ませて、撫子さんが予約していた屋外のコースに向かった。
ここはバイク専用の屋外サーキットらしく、訓練用の道路の周囲にはよく整備された芝生が生えている。景色が良い上に、他の車両が侵入してくる心配もない。
そして今、猛獣の唸り声のようなエンジンの轟音が鳴り響き、黒光りする金属の獣がフィールド上を疾走している。
その猛獣を熟練の技で乗りこなしているのは、今日私をここに誘った女性ライダー・撫子さんである。
[撫子]朝は待たせちまったからな、お返しにあたしの走りを見せてやるよ。
[player]いいね!
十分ほど前、撫子さんはそう言ってバイクに乗った。私としてもそれを拒む理由はなかった。
撫子さんが縫うように曲がりくねったルートをバイクで走破し、最後は綺麗なドリフトを決めて私の前に止まった。ヘルメットを取り、長い髪を後ろに流して、撫子さんは私の方に目を向けた。
[player]おぉ……!
サーキットの周りにいたバイク好きたちの喝采を聞き、私はワンテンポ遅れて撫子さんに拍手を送った。
[撫子]フッ。どうした、ちょっと疲れたか?
[player]撫子さんの走りを間近で見て、正直感動したというか、美しかった……です。
自分の貧弱な語彙力が憎い。
[player]バイクに関しては、たとえ自分がどれだけ頑張っても、撫子さんほど美しく、強くはなれないな……って思いました。
撫子さんはなぜか笑い出した。
[撫子]体を伏せるのは風の抵抗を減らすため、曲がる時傾くのは摩擦を増やして走行を安定させるため。そして綺麗なポーズで乗るのは筋肉を程よくリラックスさせ、長く乗っても疲れないようにするため。どれも美しく見せるためじゃないよ。
[撫子]ま、「美しい」と思ったってことは、あたしがバイクをちゃんと乗りこなせてるってことかもね。対象を完全に掌握してるプロって、オーラがすごくて圧倒されるだろ。
[player]掌握……確かに、カリスマ性を高める一番の方法だってよく聞きますね。
[撫子]あんたはあんたで、雀卓で流れを掴んだ時なんかは周りから注目されてるよ。
[player]え、本当ですか……?
[撫子]あたしが適当に人を褒めるような奴だと思うかい?
[player]……ありがとうございます。そう言えば、午後は実技訓練の基礎をやるんですよね? そろそろ始めましょうよ。
[撫子]そうだね。予行練習だけど、ちゃんと意見ちょうだいよ。
[player]任せて下さい!
実技訓練が始まり、撫子さんは朝よりも更に生き生きと、バイクについて講習を始めた。
訓練のメニューに沿って、一歩ずつバイクに乗るための知識を分かりやすく教えてもらう。彼女の指導通りにバイクに乗り、自転車並みのスピードで直線を走った。これで、初日の実技訓練の目標を達成した。
横で見ていた撫子さんも、嬉しそうに私に拍手を送ってくれた。
[撫子]よく出来たじゃないか、見直したよ。
[player]適当に人を褒めないんじゃなかったんですか。
[撫子]いちいち突っ込むんじゃないよ。さ、次行くよ。
実技パートの完成度はやはり高い。もう少し言い回しとか専門用語について変えれば完璧だと思う。明日の面接も、これでうまく行くはずだ。
最後は今日出た意見について討論して、楽しい雰囲気の中で実技訓練を終えた。
一飜市の中心部に戻ってきた頃には、辺りはもうすっかり暗くなっていた。
[撫子]もうこんな時間か、早いな。せっかくだ、一杯付き合ってくれないか?
[player]明日は面接当日でしょうが……どうしようかな。
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