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頑張って目を開ける。

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頑張って目を開ける。
せっかくこんな高い空にいるのに、この景色を見逃してはもったいなさすぎるよな。ジョセフもついてるんだから、危険な目には遭わないはずだし。ちょっとだけ見てみようか……。
[player]うぅ……。
ダメだった。ゴーグルを着けてはいたが、着け方が甘かったのか強い風が入り込み、痛くてまぶたを開けられない。
着地までは、やはりこのままでいよう。
[ジョセフ]そろそろパラシュートを開けるぞ! Are you ready!?
パラシュートが展開する爆音がしたかと思うと、体全体がぐっと上に引っ張られる感覚がした。落ちるスピードがゆっくりになり、体の自由が戻る安心感すら湧いて来た。言うまでもなく、パラシュートを操作しているのは私じゃないんだけどね。
[ジョセフ]Welcome to 大自然、My Partner!
文字通り地に足が付いたところで、私はようやく目を開けた。一面の緑が視界を埋め尽くしている。優しい色だというイメージがあったグリーンはどれも強烈な存在感を放ち、私を不思議な感覚にさせた。
本当に、テレビでしか見たことのない原生林に着いたんだ……。でも周囲を取り囲む草木を見る前に、私は頭上の青い空を仰いだ。
[ジョセフ]どうした?降りる時に忘れ物でもしたか?
[player]いや、ちゃんと空の景色を見られなくて、もったいなかったなぁって。
スカイダイビングの恐怖が少し薄らいで来たところで、私は今更ながら後悔した。
[ジョセフ]HAHAHA!だったら、帰りの時もダイブして神社の奴らにサプライズするか?
[player]それは……、その時になったらまた考えよう。
いざその時になったら、自分は絶対「やめよう」って言うだろうな。今でも足がガクガクしてるし。みんなの前に降りた時に、一姫にこんな姿を見せでもしたら、飼い主の威厳がパーになるじゃないか。
もし今回の冒険で私がジョセフのように勇敢になれたら、帰りはその提案を採用しよう。一応、一応ね?私の可能性を信じてみようって意味で、今すぐには断らないでおくのがいいよね!
[ジョセフ]じゃ、そろそろ出発するか!まずは、この辺をちょっと見ていくか?
[player]ちょっと待って。
私はまず足で地面を踏んでその感触を確かめ、それから身をかがめて土に触れてみた。
昔行ったことのある田舎の土に似た感覚ではあるが、その時よりももっと柔らかい。ましてや普段踏みしめているコンクリートの地面に比べたら、「自然の母性」と言うべきものを感じられる。
私は思わず感服した。
[player]本当にこんな森に来てるなんて……なんか、なかなか実感が湧かないなぁ。
[ジョセフ]ま、昨日までそれこそコンクリートジャングルにいた訳だしな。少し時間をかけて、この環境に慣れようぜ。
[ジョセフ]俺の真似をしてみろ、Partner。両手を伸ばして、そう、5本の指までしっかり伸ばすんだ。そして目を閉じて、このまま周りを「感じる」んだ。
[player]周りを「感じる」?どういうこと?
[ジョセフ]ちょっとした儀式さ!新しい場所に来た時は、無闇に動き回るよりも前に、その場所に馴染んでおいた方がいいぜ。
意味はよくわからなかったけど、ジョセフの言う通りに両手を伸ばし、目を閉じた。
よく聞いて……感じて……そして一体になる……
よく聞いて……感じて……そして一体になる……
様々な音が聞こえてきた。動物や植物たちの鳴き声、動く音、息遣い。
そして、何とも言いがたい、全てが混ざったような匂いを嗅いだ。
[ジョセフ]初めはどうすればいいかわからなくなるかもしれないが、それはごく自然なリアクションだ。落ち着いて指を動かしてみろ、何か掴めないか?
[player]掴むといっても……あ、この風は気持ちいいかも。
小高い丘に立っているからか、そよそよと吹く風が指の間をすり抜けていく。深呼吸してみると、心地良い涼しさが体中を巡った。
そのうち、誰かに両手を引っ張られ、泥沼から救け出されるような感覚に陥った。不思議と、私はこれが何を意味するのかわかった。
文明社会の中で生きてきた一人の余所者が、段々と野生の色に染まる感覚だ。
[player]すこし、走ってみない?ジョセフ。
気付くと、私はとにかく駆け出したいと思った。どこかの目的地を目指したい訳ではなくて、何でもいいから足を動かしたいという強い気持ちだった。
[ジョセフ]HAHAHA!心のエンジンに火がついたか?Partnerよ!
[player]エンジン……そう、その通りだ。これ以上にぴったりの表現はない!
ジョセフの言う通り、私の心臓はスカイダイビングの時よりも激しく脈動している。この焦燥感を抑えるには、今すぐ走り出して、全身に満ちたエネルギーを発散するしかないと思った。
[ジョセフ]なら、思いっきり走ってみるがいい!おっと、その前にそいつを俺にくれ。おまえの体力でこれを背負って走るなんて出来ないだろうしな。
ジョセフは私の荷物を片手で受け取り、軽々と肩にかついだ。
[ジョセフ]これでより翼が軽くなったんじゃないか?My Partner!
[ジョージ]キキッー!
いつの間にやらその辺を飛んで戻って来ていたジョージも、ジョセフの言葉に同意するように高く鳴いた。そして、すぐさま高く飛び上がった。それを見たジョセフは、口笛を吹いて後を追い始める。
[ジョセフ]俺らも飛ぼうぜ、相棒よ!Let's……
[player]Adventure!
ジョセフの番組でお馴染みの決め台詞を合図に、私たち二人と一羽は森の中でレースを始めた。
笑って走りながら、意味もなく大声を張り上げる私たちに、驚いた森の動物たちは逃げ回ったり、隠れて私たちを観察したりしていた。
先住民たちに申し訳ないとは思うが、今私は思いっきりこの解放感と楽しさを享受したかった。それに、ジョセフはこうも言っていた。
[ジョセフ]クレイジーな自分を抑えるな。この大自然の中じゃ、自由こそがルールだぜ。Be yourself!
[player]だったら疲れ果てるまで、走ってみよう!
そして、体力が尽きるまで走った私は地面に倒れ、大きく息を吐いた。
[ジョセフ]どうだ!初めてのワイルドランは?
[player]つ、疲れた……でも気持ちよかった!
[ジョセフ]HAHAHA!だったらいい!ほらよ、俺の手を掴め。横になるのは気持ちいいが、すこし歩いてから休憩する方が心臓にいいんだぜ。そうそう、ゆっくり立つんだ。
[player]ありがとう。普段から一緒に運動してたおかげなのか、初めて山に行った時よりは大分体力がついた気がする。前の私ならそのまま倒れてたよ。
[player]はぁ~。やっと落ち着いてきた……と思ったら、ふわぁ~~……なんか眠たくなってきたな。
[ジョセフ]いいじゃないか!外で目一杯遊んで、疲れたらそのまま寝る。朝起きたら、また元気いっぱいの新しい1日を迎えればいい。
[player]来たばかりだし、今寝ちゃうのはもったいないよ。そうだ、喉も乾いたし何か飲もうよ。ちょうどソーダがあるよ。
[ジョセフ]いいな!お?これうちの嬢ちゃんがCM出演してるやつじゃねぇか。一飜市市内にあった在庫は全部ファンがを買い占めたって噂だったのに、よく手に入れたな。
[player]まぁね。先日麻雀一緒に打った時に貰ったの。飲んだら宣伝してね~って言われたけど、あの勢いじゃ最早いらないよね。
[ジョセフ]プハァー。汗を流した後の一杯は沁みるぜ!あのCMのキャッチコピーは何だったかな……そうだ、カロリーゼロストレスゼロ、この甘酸っぱさ、初恋味!ってな!よっしゃあ、乾杯するぜー!
[player]後半全然違うじゃん……知られたら怒られちゃうよ。
[ジョセフ]知られなければ問題ないぜ、HAHAHA!
[player]けど、折角の原生林なのに、なんか味気ないな。ソーダは確かに美味しいんだけどさ、こう……大冒険!て感じが足りないというか。
[ジョセフ]だったら、あの辺りで水を汲んでみるのはどうだ?
野外で水汲みか。確かに冒険感はあるよな……