[player]名前だけなら聞いたことがあります。オペラでしたっけ?
[サラ]とても面白いオペラ作品よ……。
サラは軽く「カルメン」について紹介してくれた。たばこ工場で働く美しい女性「カルメン」がとある衛兵と恋に落ちるも、心変わりしてしまい、恋人だった衛兵に殺される……というまさかの結末を迎える物語だそうだ。
[player]悲劇なんですか?
[サラ]結末だけ見ればそうかもしれないけど、純粋な悲劇とも言い切れないわね~。
[サラ]もし興味があるのなら、台本などを読んでみてね~。
[player]そんなに面白いんだ、あとで調べてみます。
[オレヴィ]テーマに異論がないなら、次は配役だ。今回は、私に闘牛士のエスカミーリョ役をやらせてもらいたい。
[サラ]あら意外ね、てっきり衛兵のドン・ホセを選ぶと思ってたわ~。
[サラ]いいの? エスカミーリョの出番は他の二役に比べて少ないけれど。
[オレヴィ]肝心なのは印象的なシーンがあるかどうか、出番が多ければ多いほど有利とは限らない。サラちゃんだって知ってるだろう。
[オレヴィ]芝居も生活も私は勝ち組の方がいい。最後にカルメンの心を掴んだのはエスカミーリョだから、縁起もいいしね。今回は勝たせてもらうよ。それに……。
オレヴィさんはサラさんの髪の毛を持ち上げて言う。
[オレヴィ]ホセ役をやると、君に怪我をさせてしまうかもしれないしね。
[サラ]あらあら、もう役に入ってるのね。
[オレヴィ]ああ、準備が早いほど、勝算も高くなるだろう?
みんなの話からして、サラさんが負けることはないだろうなと思ってたけど、オレヴィさんとサラさんの冗談交じりのやり取りからは、オレヴィさんの高い演技力が垣間見える。
[player]サラさんはどの役にするんですか? 流れ的にカルメンかな。
[オレヴィ]もちろん、この役は彼女にしか出来ないと思う。
[サラ]私にしかできない、ね……。
[player]?
今サラが一瞬苦笑したような気がしたが、見間違いだろうか。
[オレヴィ]じゃ、今日はそろそろ退散するよ。一ヶ月後、ステージでの再会を楽しみにしてるよ、サラちゃん。
[サラ]ええ、またね~。
オレヴィさんが帰った後、照明係のお爺さんが満足気にひげをいじりながら笑った。
[照明係]ほっほ、こりゃあいい配役じゃないか。
[スタッフ]オレヴィさんには悪いけど、今回こそ私たちが勝つと思いますけどね。
[player]というと?
[ライアン]カルメンは「容姿端麗で歌とダンスが上手な、奔放な女性」ですから、サラ姉さまそのものじゃないですか。
[ヒーリ]カルメンみたいってよく言われるよね、サラは。
なるほど、役に入りやすいという点で言えば、こっちの方が有利ってことか。
[サラ]でも勝てるかどうかはまだわからないわよ。オレヴィの実力はみんなもよく知ってるでしょう、少しでも慢心したら痛い目を見るわよ~。
[player]もちろん、相手は強敵だし、緊張感をもってステージに臨んだ方がいいですよね。そういえば、衛兵のドン・ホセ役は誰がやるんですか?
[player]カルメンとの共演が多い分、サラさんの演技を引き立たせる非常に重要な役だと言える。慎重に選ぶべきですね……。
[サラ]あなた、いい着眼点ね。これについては、ちょうどあなたの力を借りたいと思ってた所だったの。
[player]もちろん、サラさんのために力を尽くしますよ。
[サラ]これはあなたにしか出来ないことよ……ドン・ホセ役で、私と共演してほしいの。
[player]私しか出来ない? 喜んで……ちょ、待って? 私が? ステージに?
[サラ]ええ、そうよ。なにか?
[player]なにか? じゃないですよ! 素人が立っていいステージじゃないですよね!? せめてここはヒーリさんやライアンくんに任せた方が……。
[ヒーリ]私は無理、猛獣使いだし。
[player]こっちだってただの一般客だけど!? ライアンくんは?
[ライアン]お姉さまがカルメン役をやるならいいですよ? お姉さまの恋人役、やってみたかったんです~。
[player]ええっ、それはもっと無理だよ。気持ちだけもらっとく……。
[player]他の人は? 私より適任の人はたくさんいると思いますけど……。
今この場にいる二人のスタッフに目を向けると、揃って首を横に振った。
[スタッフ]この歳じゃステージに立っても見栄えしないよ、なぁ?
[照明係]ほっほっほ、そうだのう。裏方でしっかり支えるでな、頑張れ若造。
[サラ]まあ、いきなりやれって言われても困るわよね。ゆっくり考えて、返事をちょうだい。
悪ノリの冗談だと思ってたら、サラさんは至って真剣らしい。困ったな……。
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