最近、ニュースでよく似たエピソードが取り上げられている。例えば、普段はフレンドリーなお隣さんが陰では小さな動物を虐めていたり、表向きは親しみやすくて仲のいい同僚が、毎日裏で上司に密告していたり……ああ、これ以上考えるのはよそう。こういうネガティブなニュースは容易く人を恐怖させる。
[player]私は……やっぱり裏表のない人と付き合う方が気楽です。
[東城玄音]せやなあ……確かに、裏表のないお方は安心感があって、一緒にいて気が楽どすなあ。
それからは、東城玄音と麻雀についてのんびりと話し込んだ。彼女の麻雀に対する見解はとてもためになった。
いつの間にか終わりの時間になっていた。私がそれに気づいた時には男衆が扉の外まで来ていて、私に声をかけた。
東城玄音は人の気持ちを察することも、話題を振ることも上手だ。彼女の傍にいれば、どんな人でも楽しい時間を過ごすことが出来るのだろう。それこそ彼女の魅力であり、誰もが彼女とお茶がしたいと思う理由だろう。
男衆の指示を受けて立ち上がり、帰る準備をして別れを告げようとすると、東城さんが急に私の服装について尋ねてきた。
[東城玄音]今日、旦那さんがお召しになってはるそのお洋服……えらい裾が凝ってはりますが、どこぞの名のあるお方が手がけはったものどっしゃろか?
私はノアが「ストリクス」の屋台骨という繊細な立場であることを考え、「Chaque Jour」を彼女に教えた。
[東城玄音]教えてくだはってありがとうさんどす。こんなに素敵なもんを作らはるお店には、今度伺わんといけまへんなあ。
「幾度春」を出ると、ノアが入口で待っていた。
彼女と車に乗り、「Chaque Jour」に戻って着替えを済ませた。今日見聞きしたことを報告しようとすると、脱いだ服の肩のあたりから、彼女が注意深くある物を取り出しているのが見えた。
[ノア](ショートメール)超小型カメラ。報告の手間を省くため、今日のことは全部記録しておいた。
いつの間にそんな物を取りつけたのかと聞きかけて、私が東城玄音に会いに行く前に、ノアが私の肩を叩いたことをふと思い出した。まさにあの位置だ。
言いかけてはやめを繰り返し、何度かツッコミ台詞を口ごもったが、最終的に諦めた。ここ数日で、私はすっかり「ストリクス」のやり方に慣れてしまったらしい。
まあいいか。玖辻に報告する手間が省けたのだから。
家に帰り、麻雀の誘いを全部断ってベッドに倒れ込んだ。任務を遂行出来たからだろうか、開放的な気分だ。
このタイミングで、玖辻からショートメールが届いた。
[玖辻](ショートメール)今日のアンタの働きには満足だ。数日後、取引の仕上げのために迎えに行く。
実を言うと、これを通して彼がどんな有益な情報を得られたのか見当もつかなかった。あの伝説の四貴人に近づくうちに謎が謎を呼び、それらの謎が互いにぶつかりあって溶け合い、また新たな謎を生み出している。
いつか、これらの真相がわかる日が来るのかもしれないな。そう思いながら、次第に眠りに落ちていった。
categoryStory:
ending: