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漫談を聞く

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[エリサ] 漫談を聞くこと!
[竹] 不正解です。
[竹] ヒントを与えましょう。
[竹] 一番右端の家には菊が植えられていて、そこの主人は絵を描くのが好きではない。お茶を飲むのが好きなのは一番左の家の主人で、珠算が好きなのは三番目の家の主人です。
[player] つまり、一番右の、菊を植えている家の主人は、漫談を聞くのが好き!
[竹] そうですね。では、二番目の家の住民、蘭を植えている人の趣味はなんでしょう? 残った趣味は一つですよ。
[エリサ] あっ、リサリサわかった! この人は、絵を描くのが好き!
[竹] その通りです。かなり絞れてきましたね。左端の家の主人は、お茶を飲むのが好き。三番目の家の主人は、珠算が好きで、門に梅を植えていない。
[竹] そうなると、梅が植えられているのはどこの家でしょうか?
[ハンナ] あっ! わ、答えわかったじゃ!
[エリサ] むむ、リサリサもわかった!
[-] 三人は、私に目を向けた。
[player] な、なんでそんな目でこっちを見るの、私もわかってるよ!? 梅を植えている家の人は、お茶が好きってことでしょ!?
[梅] 竹、この問題、ここまで事実に寄せて作る必要はあったの?
[player] あっ、やっぱりそういうことなんですか?
[梅] ええ。竹が言った家の主人は、私達梅・蘭・竹・菊の四君子のこと。
[player] ってことは、梅が植えてある家の主人が、梅さん? 梅さんは、お茶が好きなんですか?
[梅] 「無双街」にいる人は、みんなお茶が好きなんじゃないかしら? 頭をすっきりさせるには、濃いお茶をいただくのが一番だと思うわ。
[player] となると、菊の人、つまり九華さんの趣味は……お笑い?
[player] それから、蘭さんは絵を描くのが好きってことになって……。
[竹] こっ、この話は、ここまでにしましょう。
[梅] 竹は、蘭のことになるといつもこうね。
[player] 蘭さんって、どういう人なんですか?
[梅] 蘭は昔から体が弱くて、家にいることが多かったわ。竹も九華も、小さい頃はよく蘭にお世話されていたの。
[player] そうなんですか、心温まるお話ですね。
[竹] 心温まることなんてないですよ。うんと小さい頃から、寝る前にお化けの話ばかりしてたんですよ? 温かみの欠片も感じられませんよね?
[梅] それ、蘭に聞かれたら、楓花様でも助けられないかも。
[-] 竹くんは何か思い出したのだろうか、顔が一気に青ざめた。
[竹] うっ……そ、そうだ。め、面接の結果を発表しましょう。
[竹] ハンナさん、あなたは数字に関しては柔軟な思考をお持ちのようですが、残念ながら私達が求める能力に沿うものだとは言えません。
[竹] エリサさん、あなたには確かに数学の才能がありそうです。しかし、その才能が開花するまでには、もう少し時間が必要だと感じられます。
[竹] 従って、総合的に判断した結果……PLAYERさん、あなたをアルバイトとして雇用したいと考えました。
[player] なるほど……ん? ええ~っ!? 私は面接官だったはずでは……?
[竹] あなたは今日、面接官と、面接希望者の友人という二つの身分を柔軟に切り替えられていました。僕は、あなたなら出来るって信じています。
[player] どうしてこうなった!? ていうか、そもそもどんなアルバイトなのかわかってないんですけど!?
[竹] 業務内容のことですか? それはもちろん……
[梅] 私からもいいかしら。実を言うと、PLAYERさんに、このアルバイトをぜひお願いしたいと思った決め手があるの。面接を始める前に話したこと、まだ覚えてる?
[player] 面接の前に話したこと……?
[梅] お帳場で起こった事件、その犯人はいったい誰なのか。
[-] 私と竹くんは、揃って後ずさった。顔を見合わせると、お互いに「まずい」という顔をしていることがわかった。
[梅] 実は、最近、従業員から苦情が何件も来てるの。そのほとんどが社員食堂に関するもので、「賄いの鶏肉料理の切り方が雑になった」「肉が小さく切られすぎていて、火が通り過ぎてしまいパサパサになる」「使えない食材が出てしまうので、そのぶんは廃棄して、一から下処理をやり直すしかない」と。だけど、ここ最近で「竹雲」の調理部に新しい人は来ていない。
[-] そう言うと、梅さんは「食材廃棄リスト」を取り出し、左右に振ってみせた。
[梅] 九華はもう吐いたわ。二人はどうする? まだあの子を庇う?
[-] 梅さんは柔和な微笑みを浮かべていたが、目は全く笑っていなかった。
[梅] そういえば、PLAYERさんって、昨日ちょうど九華と裏庭にいたわよね。
[梅] もしかして、あなたも関与しているの?
[-] この流れ……もしかして、今日の件は、最初から私を釣るための罠だった……ってこと!?
[梅] 「材料が雑に処理されるようになったせいで、厨房での調理が難しくなった」……この件について、あなたは何か知っているの?
[player] してない! 本当にしてません! 昨日は、ただ九華さんと一緒に、庭で走り回っていた鳥達を捕まえただけです!
[竹] あ~……九華、僕は裏切ってないからね。今回は。
[player] えっ、あの、それってどういう意味ですか?
[竹] 九華はすごい頑固な性格ですし、死んでも白状なんかしませんよ。あなた、梅さんに騙されたんです。
[梅] 推測はしていたけど、あなたの今の発言のおかげで、確証に変わったわ。それじゃ、ここの証人欄に、署名と印鑑を押して。
[player] くっ……すみません九華さん。あなたのお姉さんの方が一枚上手でした……。
[-] 目を閉じ詫びを入れながら、ギュッと拇印を押した。
[梅] これでよし。ところで、アルバイトについてはどう? 引き受けてくれる?
[-] 満足気に署名と拇印を見つめ、丁寧に書類を折りたたんでポケットにしまうと、梅さんはそう言った。
[player] あの、その件とアルバイトって、関係あるんですか……?
[-] なんだか嫌な予感がする。
[竹] アルバイトの内容は、ここの掃除です。
[player] ええ!? じゃあ、あの面接はいったい? 算数の問題ばかりでしたけど!?
[竹] 床に散らばっているのは、全部帳簿です。簡単な計算が出来ないようでは、整理も出来ないでしょう。とにかく……
[梅] とにかく、PLAYERさんと竹の二人で、ここを全力で掃除して。「仲間」をかばって、私に黙っていた罪滅ぼしとしてね。九華の方は、後で蘭がたっぷり「お話」してくれるわ。
[梅] さ、面接したお二人は、こちらへどうぞ。
[-] エリサさんとハンナは、梅さんに案内されて出て行った。私は混沌としたお帳場の様子を改めて確認し、絶望のあまり気を失いそうになった。
[player] 九華さんにも、ちょっとくらい手伝ってもらうべきじゃないですか?
[竹] それはあきらめてください。九華に手伝わせても、余計に悪化するだけです。
[player] それもそうですね……。はぁ。夕食に間に合うように、さっさと始めましょう!
掃除と片付けは、それから数時間続いた。
[player] はぁ……疲れた。また九華さんに美味しいもの奢ってもらわないとだな。
[竹] PLAYERさん。
[player] なんでしょう?
[竹] 今更なのですが……こうして知り合えて、僕は嬉しいです。
[player] おお……急にそんなことを言われると、なんだか照れちゃいますね。
[竹] これから、九華の尻拭いをする人が僕一人だけじゃなくなると思うと、つい。
[player] 全然嬉しくないです……。
[player] そういえば、竹さんと九華さんって、同い年なんですか?
[竹] 梅姉さんから聞いてなかったんですか? 九華は僕の……
[-] なぜか竹くんの声が急速に小さくなっていったので、私は何を言ったかはっきりと聞き取れなかった。
[player] 僕の……すみません、なんですか?
[竹] 姉……です。
[竹] あーもう! あのバカ、僕よりたった半時間早く産まれただけのくせに! 何かにつけてこっちが姉だと主張してくるけど、全然姉っぽくないんだよ!
[player] ああ……。だからさっき、九華さんのことかばおうとしたんですね。
[竹] とにかく! 今日から「バカ九華尻拭い同盟」成立です、いいですか?
[player] 急に変な同盟を組まないでください!
[竹] では決まりってことで。一緒に働いてくれたお礼に、夕食をご馳走しますよ。
[-] 少年はサッと立ち上がると、笑顔で私に手を差し伸べた。最初は気付かなかったけど、こうして笑っていると、確かに九華さんにそっくりだ。
[竹] もちろん、九華のおごりで、ですけどね。