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シアターの前で参加者を募る。

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シアターの前で参加者を募る。
[player]いっその事、シアターに着いてから仲間を探すのはどうかな。スタッフさんに他の誰かと組ませてもらうのも手だと思うよ。
[一ノ瀬空]し、知らない人と組むんだよね……。
[player]いいじゃん?麻雀仲間が増えるいいチャンスだと思うよ。
一ノ瀬くんは嫌がってるという感じでも無くて、ただ少し躊躇ってから私の提案を受け入れた。
[一ノ瀬空]確かに、試す価値はあると思う。早速行ってみる?
[player]今は道も混んでるし、もうちょっと休憩してから行こう。このカフェ結構評判いいし、一ノ瀬くんもなんか注文したら?
[一ノ瀬空]キミと同じやつがいい。
[player]じゃ座って待ってて、注文してくる。
それから30分後、私と一ノ瀬くんはシアターの前に到着した。受付前はチラシを持った人たちでごった返しているけど、スタッフさんにどんどん捌かれていく。
一ノ瀬くんは、スタッフさんに、自分たち二人しかいないので、他の誰かと一緒に参加したいと伝えた。
[店員]本日は沢山のお客様にご来場頂いておりますので、お客様とご一緒出来る方はすぐに見つかるかと。ですので、先に本日参加される公演を決めて頂ければと思います。
[一ノ瀬空]わかりました、じゃあ、この「異世界神社」を……。
[店員]かしこまりました。では、代表者の方はあちらのカウンターでお手続きをお願いしたいのですが……
[一ノ瀬空]ボクが行きます。
[店員]では、こちらへどうぞ。
スタッフさんは営業スマイルのまま一ノ瀬くんを向こうのカウンターへ案内していった。その場に残された私は目の前にあるお客様ノートを開き、なにか面白いことが書かれていないかとパラパラページをめくる。
ノートに夢中になっていると、にぎわう雑踏から少し気になる会話がチラッと聞こえてきた。
[???A]おい、さっきのって確かあの秀才クンだよな……あいつ図書館以外の所にも行くんだな。
[???B]他に友達も一緒みたいだった。よく見えなかったけど。
[???A]あっちも二人で一番人気の公演に行くって言ってたけど、どうかなー?誘ってみる?
[???B]ん……でも、急に声かけて、一ノ瀬君困らない……?
[???A]それは……うぅ……この前さ、やっと勇気出して秀才クンに数学教えてもらおうと声かけたんだけど、他のやつに呼ばれてフラれちまってさ、それ以降話すきっかけなかったんだよな……。
[???B]……やっぱりやめとく?
[???A]でも、もったいなくね?ただでさえ学校でもなかなか会えないのに、外で会えたんだぞ?
少年らしい声を辿って辺りをうかがうと、近くに制服を着た男子生徒2人組を見つけた。青露中学校の生徒って、みんな制服で出かけるのかな……。
一ノ瀬くんと同じ制服、秀才クン呼び、友達がいることに驚く……この子たち、さては一ノ瀬くんのことを言ってるな。
その推測を証明するかのように、一ノ瀬くんが戻ってくると、二人組がこっちに近づいてきた。
[???A]よ、よお!秀才クン!
[一ノ瀬空]え?茂武くん、明くん。こんにちは。
[茂武]ここで会うなんてな。あー、ゴホン、さっきスタッフさんから、秀才クンたち二人が一緒に参加する人を募集してるって聞いたんだけど、俺らも二人しかいなくてさ、良ければ一緒にどーかな?
[一ノ瀬空]え、いいの?
[茂武]も、もちろん嫌ならいーから、忘れて……。
[一ノ瀬空]ボクはぜひ一緒に参加したいけど、PLAYERさんの意見も聞かないと……。
[茂武]えっ?
クラスメイトの突然の誘いに対して、一ノ瀬くんは特に驚かなかった。むしろ相手の方が、一ノ瀬くんの快諾に驚いたようだ。
[player]私たちは「異世界神社」をやりたいんだけど、君たちもそれでよければ一緒に行こう。
[茂武]もちろんオッケー!でも俺ら、脱出ゲームはこれが初めてだから、よろしく!
[player]私たちも初めて、でも謎解きは一ノ瀬くんもいるしなんとかなるでしょ。
[店員]お客様、もうお揃いでしょうか。でしたら「異世界神社」のご用意が出来ましたので、こちらへどうぞ。
[茂武]うわぁーー!どっから出てきたし!
茂武という名の少年は元気がよく、リアクションもいちいち大きいから、四人グループの雰囲気はずっと明るいままだった。
でも一ノ瀬くんは、あんまり二人と親しそうに話さないし、どう見ても日々を共に過ごすクラスメイトの感じではない。その理由を探るべく、クラスメイトの二人に話を聞いてみた。
[茂武]まさかあの秀才クンが、本当に俺の誘いに乗ってくれるとはなー。
[player]断られるつもりで誘ったの?
[茂武]だ、だってさ……あいつ、あんま学校にも来ないし、来ても数学オリンピックの準備とかで忙しそうで、俺みたいのとはあんまり話さなくってさ。正直脱出ゲームに興味あるのも知らなかったし、もっとこう……宇宙ロケットとか、未解決の謎とかそーゆーのが好きなんだろうな、と思ってた。
[player]はは、一ノ瀬くんはあくまで君たちと同じ中学生だよ。科学オバケみたいに言っちゃって。
[茂武]そ、それは、もちろんそういうイメージってだけだよ。
一ノ瀬くんの病気のせいで、クラスメイトの間でそんな誤解をされてるとは思わなかった。
[店員]では皆様、目隠しをしてください。まもなく異世界への旅が始まります。今回の旅は全7部屋、今までの最速記録は46分34秒です。
スタッフさんから目隠しを受け取り、一瞬嫌な予感がした私はスタッフさんに聞いてみた。
[player]これ、着けなきゃダメ?
[店員]ゲーム演出を存分に体験していただくために、今はぜひご着用ください。
無情にも光が奪われ、私はスタッフさんの誘導でひたすら前進した。茂武くんが誇張抜きで泣きながらついて来る声を聞いて、私もスタッフさんも思わず笑った。
[茂武]アーミン、アーミンどこ?うわぁああーっ!誰か喋ってー!助けてー!!
[明]……モブ、ここ。
[一ノ瀬空]PLAYERさん……そこにいる?
[player]いるよ、大丈夫。
[一ノ瀬空]うん……。
スタッフさんの足音が遠のいていき、シャキーンという効果音が私たちにゲームの始まりを告げた。
目隠しを外すと、奪われた視界が戻ってくる。どうやら、私達は和室の縁側に立っているようだ。木製の屋根と床、庭には池と橋、その綺麗な景色は想像していた脱出ゲームとはまったく違うものだ。
[player]なんだここ……庭の配置も、部屋の装飾も、魂天神社の客室と全く同じじゃないか。なんなら匂いまで再現されてるし、デザイナーさんすごくこだわって作ったんだろうな。
[player]今この場に一姫とワン次郎が出てきても不思議じゃないくらいだ。
[一ノ瀬空]ここのオーナーは、以前インタビューで、公演ごとに実際にロケハンしてから作ってるって言ってたよ。参加者に限りなくリアルな体験をして貰うために、大金と長い時間を費やしたって。
[player]以前のインタビューって、一ノ瀬くんは前からここのこと知ってたの?
[一ノ瀬空]いや、さっきここに関するニュースを調べただけだよ。そういう情報も、クリアするために使えるんじゃないかと思って。
[茂武]なあなあ、これっていわゆる嵐の前の静けさってやつ?俺たちが油断したタイミングで、邪神とか闇の巫女さんとか出てこない?
[一ノ瀬空]この「異世界神社」は謎解き寄りの公演だから、そういうのはあんまり出てこないと思うよ。
[茂武]そ、それなら良かった。じゃあ何すればいい?とりあえず手がかりでも探すか?
[player]怖い要素がないって聞いた途端に元気になったな。
[明]……それは。
[player]ん?どしたの?
三人がアーミンこと明くんに目を向けると、明くんは言いにくそうに少し躊躇ってから話を続けた。
[明]……それは、モブが怖がりだから。暗いところも、高いところも、水辺もおばけも苦手……。
[茂武]あのさ……ちょっとくらいメンツを立ててくれよ……。
美しい景色が少年たちの緊張を解いたのか、一ノ瀬くんもほのぼのとした空気の中で、謎解きのことも忘れて雑談に加わった。
[守護者]ふぉふぉふぉ、皆のもの、こんにちは。わしは神社の守護者と申す者だ。「天の声」と呼んでもよいぞ。さっそくだが、よい知らせと悪い知らせがある。どちらから聞くかの?
歪な声がラジオから室内に響き渡り、雑談をぶった切った。一ノ瀬くんが私たちの代表として、声に答えることになった。
[一ノ瀬空]じゃあ、悪い知らせから聞かせて。
[守護者]ふぉっふぉっ、悪い知らせじゃな。悪い知らせ、行くぞい!
[一ノ瀬空]……
[守護者]神社を邪悪な暗黒の力から守るため、神主は神社全体をこのスクエアワールドに転送したのじゃが、この世界もすでに暗黒の力に蝕まれ、邪悪な魔神が蘇ろうとしておる。お主らはもうすぐ、魔神の生贄になるのじゃ。
[一ノ瀬空]じゃあ、よい知らせは?
[守護者]ふぉふぉ、よい知らせじゃな。神主はこんな事もあろうかと、神社に光の導きを残した。その導きに沿って最後の部屋に進み、転送の魔法陣を起動すれば元の世界に戻れるぞ。
[守護者]魔神が蘇るまでに魔法陣を起動出来なかったら……ふぉふぉふぉふぉ……。
[一ノ瀬空]その神主が残した導きって、一体……?
[守護者]いきなり核心に触れるとは、小僧、なかなかやるのう。……じゃが、わしの答えは……知らん!紙切れかも知れぬし、絵巻きかも知れぬ。神主の考えなぞ、わしに知る由もないのじゃ。
[守護者]じゃが、わしは善き守護者じゃからな、皆にありがた~い手助けをしてやろう。謎解きに詰まった時は、わしがヒントをやるぞ。もちろん、それ相応の「対価」は払ってもらうがな。
[茂武]魔神のいけにえ……!?ホラー要素ないってさっき言ったよね??
[明]そういう設定ってだけだから……。
[player]さっそく、手かがりを探そうか。この部屋大きいから、結構時間かかるかもね。
中は十分に明るい。探索にもってこいの環境だ。茂武くんと明くんは二人で目の前の地面をチェックし、一ノ瀬くんは一人で探索を頑張っている。
[player]一ノ瀬くん、何か私に出来ることある?
[一ノ瀬空]部屋の出口がパスワードでロックされてるから、PLAYERさんはどこかに数字が書かれてないか探して。
ここが魂天神社を再現しているとしたら、この部屋に関しては私が四人の中で一番詳しいはずだ。だが、行動し始めるやいなや、天の声からのお知らせが響いた。
[守護者]ばばばばーん、おめでとう。最初の謎をこんなにも早く解くとは、かくも聡明な頭脳、さぞ魔神様もおよろこ……いや、早く元の世界に戻れるじゃろうて。
早くね?と、お知らせを聞いて素直に感じた。どうやら一ノ瀬くんがパスワードを見つけてロックを解除したらしい。最初の部屋でそこまで難しくなかったとしても、一ノ瀬くんってば想像以上だ。
[player]あはは!やっぱ一ノ瀬くんがいれば楽勝だね。
[茂武]え、なに、もう終わり?早すぎだろ……脱出ゲームってこんなもんなのか?
[一ノ瀬空]いいの?
[茂武]あ、いや、えっと、もっとこう……罠とか、隠し要素とかあったりするんじゃないかと……まぁいいや、次行こ次!
[明]モブ……気をつけて。
[茂武]え?何を?
[player]罠に気をつけてねってことでしょ。罠を踏んだら魔神に捕まるぞ~。
[茂武]う、うそだろ……そんなんあんのか……。なぁ、アーミン、俺を助けてくれよな……!
[一ノ瀬空]……
一方一ノ瀬くんは、謎よりもどうすれば二人の会話に加われるかを一生懸命考えているようだ。
第二の部屋は、さっきと違って、空間の輪郭がギリギリわかるような暗さになっている。何も置かれていないこの部屋は、広すぎて不気味な感じだ。
暗くてお互いを見失いそうなので、私たちは集まって部屋を探索することにした。私は壁を伝って前方へ進み、壁と床に何か手がかりがないか必死に探し始めた。
[茂武]み、みんな!こっちになんかの仕掛けがあるっぽいぞ!
茂武くんは一ノ瀬くんと明くんを両脇に置いている。仲間に挟まることで自分の怖さを半減する作戦だ。そのため、彼が探したところは一ノ瀬くんも一度見たことになる。緻密さを持つ一ノ瀬くんなら、そういうのがあったら見逃したりしないはずだ。
茂武くんが仕掛けのボタンをぽちっと押すと、部屋の壁が、ゴゴゴという重い音とともに左右に開き、隠し扉が現れた。扉の奥は細長い廊下が続いており、暗さと不気味な効果音も相まって恐怖感が増し増しだ。
[守護者]お主ら、こんなに早く隠し部屋を見つけるとは、さぞ元の世界へ戻りたい気持ちが強いのじゃろう。じゃが、二つの部屋の謎を同時に攻略せんと、隠された鍵は入手出来ぬ。二組に分かれて進むのじゃ。無事を祈るぞ……ふぉふぉふぉ……。
[茂武]うわぁああ!びっくりしたー!つかなんだよ「無事を祈る」って!攻略が失敗したら魔神に捕らわれちまうのか……。
[明]……設定に入り込みすぎ。
まぁ、設定はどうあれ、ここは二手に分かれて、隠された鍵を入手するのが目的らしい。グループ分けをどうするかはクリア率に大きく影響するから、ここは一ノ瀬くんと組みたいけど……一ノ瀬くんにクラスメイトと交流する時間をあげたいし、あえて分かれるのもありだよな……。
[茂武]ふ、二組に分かれる必要があるらしいぞ?どうする……?