八木さんはそんな私を無視し、計算を続けている。
[player] ほら、あとでジュース買ってあげるからさ。
[八木唯] ……先輩
[八木唯] ……
[八木唯] アイスコーヒーがいい。
[player] ……よし、任せなさい。
ちょうど喉が渇いたところだ。近くの駐車場に自販機があってよかった。
[player] せっかくだし、みんなの分も買ってあげようか。
そう思いながら、八木さんのアイスコーヒーとジュース何本かを買って砂浜に戻る。
だが、八木さんの姿がどこにもない。
[player] ねえ、八木さんどこ行ったかわかる?
[小鳥遊雛田] え、唯ちゃん?
[未来] ……ホントだ! ゆいちんどこ行ったんだろ?
こんな何もない砂浜で迷子になるものだろうか?
八木さんとさっき交わした会話を思い出す。
……まさか、泳げることを証明するために一人で海に……?
[player] ……探さないと。
[小鳥遊雛田] うん、みんな呼んでくるね!
大変なことになった。
みんなで手分けして砂浜を探すけど、八木さんらしき人影はどこにも見えない。
沖に流されてるはずはない……とは思うんだけど……。
どこにいる? 八木さん、無事だよね……!?
ふと、百メートルほど先にある岩場が目に留まった。
砂浜から海に向かって突き出している岩場はごつごつしていて、起伏も激しい。
岩場を登ってみると、反対側の砂浜にしゃがみ込んでいる八木さんを見つけた。//n岩場が死角になって見つけられなかったのだ。
[player] ……ふう。八木さん、やっと見つけたよ。
[八木唯] ……先輩?
八木さんは何が何だかわかっていないらしく、//nいつもの無表情で目線をきょろきょろ動かしている。
[player] よかった~、みんな心配してるよ。ちょっと連絡するね。
[八木唯] ……待って
[八木唯] まだ、場所までは言わないで。
[player] ……うん?
よくわからないけど、//nひとまずみんなに「八木さん見つかったよ」とだけチャットを送る。
八木さんが岩場へ登ってきた。
同じ目線に立った彼女の掌には、小さな白い欠片がいくつか乗っている。
[player] まさか、貝殻探してくれてたの?
夢中で探していたら、こんなところまで迷い込んでしまったのか……。
[八木唯] 珍しい種類、ではないけど……
[八木唯] 先輩、あげる。
[player] ……ありがとう、八木さん。
[八木唯] ……下の名前でいいよ。
[player] え?
[八木唯] 先輩。ちょっと二人で話そう?
[player] もちろん、八木さん。
[八木唯] ……
[player] ゆ、唯。
八木さんは満足そうに頷いた。
波が岩肌にぶつかっては砕ける、心地よい音。
それに耳を傾けながら、二人で岩に座って水平線を眺める。
[八木唯] ……大昔、地球が丸いことを誰も知らなかったころ。
[八木唯] とある古代文明では、ドーム型の地球を巨大な象たちが支えていて、
[八木唯] その下にはもっと巨大な亀が棲んでいると考えられてた。
[八木唯] 面白いよね、先輩。
[player] うん、確かに面白い。
[八木唯] 昔の人は、地球が丸いことを知ったとき、どんな気持ちになったんだろう。
[八木唯] こんなに科学が進化した今、それ以上の新発見は訪れる……?
傾き始めた太陽が投げかける光で、唯の横顔は眩しく象られている。
そこには、今の自分ではまだ踏み込めない何かがある気がした。
[player] 唯の博識さは、科学者のご両親の影響?
[八木唯] うん。二人が生きてたころ、色んなことを教えてもらった。
[player] ……え? 生きてたころ……?
唯は、長い髪を指で梳かしながら頷いた。
[八木唯] 中学校に上がる前、飛行機の事故で
[八木唯] ……そんな顔しないで、先輩。
[八木唯] もう、昔の話。今は気にしてない。
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