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耳をふさぐふりをする

jyanshi: 
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虎穴に入らずんば虎子を得ず……私は初めから、千織の有難い助言を聞き入れる気はなかった。千織が背中を向けた瞬間、私はこっそり耳を塞いでいた手を離した。 [三上千織]……ニャニャ? ニャーニャー、ニャー。 夕陽が少女の髪を柔らかな金色に染め上げている。猫の鳴き真似をしてみせる千織の柔らかな声に、私はすっかり魅入られてしまった。 [三上千織]千織が来たよ、おいしいものを持ってきたの。ちびちゃんたち、出ておいで。 千織のこんな声を聞くのは初めてだった。相手が猫じゃなくて自分だったら瞬殺だろうな、などと想像していると、不意に茂みがガサガサと動き、中から、色とりどりの毛玉が複数出てきた。 子猫達はニャーニャー鳴いて千織にすり寄っているが、初めて見る私には警戒していて、近寄る素振りも見せない。 千織はバッグから、元々用意していたのであろうキャットフードと猫用おやつを取り出した。袋を開けてみせると、警戒心の薄れた子猫達が私達の足元に群がってきた。すると、猫用おやつの袋がサッと視界に入ってきたので、私は耳をふさいでいた手を離し、袋を受け取った。 [三上千織]……一緒にエサをあげるわよ。そうすればあんたにも懐くわ。 [player]あはは、ありがとう。 [三上千織]あ、あんたのためじゃないんだからね、この子たちに怖い思いをさせながら食べさせる訳にもいかないでしょ。 [player]うんうん、そうだよね。千織が言ってた用事って、ここで野良猫たちにエサをあげることだったんだね。九条さんにはこのこと言ってないの? [三上千織]千織は子供じゃないのよ。何でも璃雨にやってもらう必要なんてないんだから! [player]そうだね、千織は一人でもちゃんと出来るもんね。 [三上千織]……当然よっ。 [三上千織]千織はそっぽを向いてしまった。エサをあげるのに集中することにしたようだが、真っ赤になった耳の先だけは隠しきれない彼女の本心を示している。自分の秘密基地に友達を連れて来れたことが嬉しいんだろう。 しかし、子供が遊ぶような公園でもない、こんな辺鄙な所でよく子猫を見つけたよな。どうやって……? ふと疑問が沸いたが、この温かい雰囲気を壊さないためにも話題に出すのはやめておくことにした。 [三上千織]えっ!? [player]ど、どうしたの? [三上千織]突然千織が上げた声に、私はまたしても自分の思考が読まれたのではと思ってビクッとした。 [三上千織]……数が合わない、一匹足りないわ。 [三上千織]前に来たときは子猫が五匹いたんだけど、茶トラの子がいないのよ。