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ごめん、足を引っ張っちゃって

jyanshi: 
categoryStory: 

ごめんね、エイン…… え? どうして急に謝るんだ。 エインくらい優秀で強い狩人だったら、ゼクスにも舐められなかったと思う。それに、まだ正面から撃ちあってもないのに、もう三発も被弾しちゃったし…… どっちが勝つかなんて、まだわからないだろ。 でも、私は…… PLAYER、狩りってのは単純な強さが全てじゃない。自分の力量をしっかり知って、己に見合う戦略を立てられるかどうか……それこそが勝利への鍵さ。 ん? 今の状況で言えば、確かにゼクスとハンナの方が俺達よりずっと強いかもしれない。けど、あいつらは自分の強さにあぐらをかいて、初めての狩り場で二手に分かれることを選んだ。あまり利口なやり方だとは思えないな。もしかしたら、それが俺達……敵の反撃のチャンスになっちまうかもしれないだろ。 でも、こんな状況で私がエインの役に立てるとは思えないけど…… PLAYER、そんなに自分を卑下するなって。ちょうど、君にしか出来ないことがあるぜ。 確かに、ゼクスは近接の白兵戦には相当長けてる。だけど、銃を使うような遠距離の戦いは得意じゃない。無駄撃ちの多さがその証拠だ。 弾を撃ち切ったら、きっと得意な接近戦に持ち込もうとするはずだ。けど、それはむしろ俺達にとってはチャンスだ。 俺があいつとやり合う。君はここで、遠くからあいつを狙撃してくれ。 なんかすごいプレッシャーなんだけど……弾が外れないことを祈るよ。 エインとの作戦会議が終わる頃、遠くで響いていた銃声も段々と落ち着いていった。エインは人差し指を立てて静かにするよう合図し、狐の耳を動かして周囲の音を聞き取っている。 エインがダミーナイフを手にしたのを見て、私はレーザー銃を構える手に力を込めた。そして、心の中でカウントダウンを始めた。 5……4…… PLAYER、そんなに気負うことないぜ。 3…… 君のこと、信じてる。 2…… だから、俺のことも信じてくれ。 1…… 俺達は絶対勝つ! エインは弓から放たれた矢のように飛び出し、縄張りを侵された野獣の如く、自ら襲撃者に向かって攻撃を仕掛けた。 もちろん、ゼクスも黙ってやられるはずもなく、すぐ応戦した。優秀な狩人同士の戦いは、勇猛さと野性に溢れている。土埃が舞い、木の葉が舞い落ちる中、スコープから見えるのはおぼろげな二つの影のみ。どちらがエインかは、毛の色で判断するしかない。 でも……タンジェリンオレンジとブラウンじゃ、色が近すぎるでしょ!!! ふぅ……落ち着け私。万が一エインに当たったら大変だ。 腕のポイントカウンターは、絶えることなく震えながら赤い光を放っている。ゼクスと交戦しているエインは、未だ優位には立っていないようだ。呼吸を整え、半ば無理やりに自分を落ち着かせ、再びレーザー銃を構えた。引き金に指をかけ、いつでも撃てる状態だ。 あれ? エインが、こっちを見てる? スコープ越しに、エインが、こちらを見ながら微かに唇を動かすのが見えた。 もしかして、撃てって言ってるのかな? でもゼクスがどこにいるかまだ……どうすれば……! 「パンッ!」頭で考えるより、体が先に動いてしまった。エインが言っていることを理解した瞬間、指が引き金を引いていた。二人は砂埃に包まれていて、自分の攻撃が命中したか全くわからない。 当たった? くっ、すごい反動だ……エインに当たったりしてないよね……? 青チーム一番の選手、脱落です。 ! 成功した……? チーム分けでは、こっちは赤だった。となると、脱落したのはゼクスで間違いないだろう。 やったなPLAYER! 一発でヘッドショット決めるなんて、こいつは大きな一勝だ。 いやいや、エインがちゃんと指示してくれたからだよ。 君が俺を信じてくれたからってのが大きいけどな。俺が撃てって言ったとき、ゼクスはまだスコープの中心には来てなかっただろ? そうだね。 おい、テメェら仲間同士でお世辞言い合って楽しいか? 俺様はまだここにいるんだ、忘れてねぇだろうな! 全部聞こえてんぞ!! 負け犬の遠吠えは見苦しいぜ。 チッ、どっちが最後に勝つかはまだわかんねェだろ。俺の役割はあくまで時間稼ぎだからな。今頃、ハンナの奴がとっくに宝を手に入れて陣地に戻ってる頃だろうさ。 そうなりゃ今度は、テメェが俺様を兄貴と呼ぶ番だからな! エイン、確かにゼクスにだいぶ足止めされちゃったよ。ゲーム終了まであと二十分だ。 ハンナの素早さを考えると、今まで宝が発見されたって知らせがないってことは、あっちも何か問題が起きてるんじゃねーかな。 え? でも、森の中で狩人を阻めるものなんてあるかなぁ? 行ってみりゃわかんだろ。 そのまま、お宝が隠れているエリアにたどり着くと、宝自体は確かにハンナが手に入れたらしいとわかった。しかし、地面に残された足跡は乱れていて、ハンナがどこに向かったのかはエインにもわからないらしい。どうすることも出来ず、私たちは自分の陣地に戻ってアナウンスを待つことにした。 時間となりました。ゲーム終了、今回は引き分けとなります。 ハンナがお宝を見つけたのに、どうして引き分けなんだろう? エインと一緒に待機エリアに戻ると、全身ツタだらけのハンナがいた。どうやら、ハンナは直感を頼りに宝を手に入れたはいいが、道に迷ってしまったらしい。 PLAYER、よく聞け……森で方向感覚を失うってのは、狩人にとっちゃ一番やっちゃいけねぇことだ。 エインの声はとても小さかったが、それでもハンナのモフモフとした耳がぴくりと震えたかと思うと、ぺたんと寝てしまうのが見えた。 ハンナとゼクスは「帰って鍛練する」と言ってその場を去り、私とエインは気分よく帰路についた。道中、行き交う車の排ガスを吸ったエインは何度もくしゃみをし、先ほどまでいた美しい大自然の余韻に浸っていた私も、すぐさま現実に引き戻されてしまった。 でも、残念だな。 ゲームに勝てなかったから? いや、そうじゃなくて。あそこはすごく自然豊かで綺麗だったし、ああいう緊張感も結構気に入ったから。 なんだ、そんなことか。ゲームの前にした話、まだ覚えてるか? エインの故郷の話? ああ、君さえ良ければいつでも行けるぞ。 ひなたぼっこも、もちろん狩りだって出来る。本物の大自然ってやつを見せてやるよ。 振り返ってエインを見ると、まるで答えを待つかのようにエインもこちらを見つめていた。 それじゃあ、いつ行くか、計画を立てよう。 約束な! うん!